Project/Area Number |
23KJ2161
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 64060:Environmental policy and social systems-related
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Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
一原 雅子 総合地球環境学研究所, 研究基盤国際センター, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | 気候変動影響への公正な変革的適応 / フューチャー・デザインによる気候変動適応策 / 専門知の対等な相互伝達 / 農業分野における変革的適応 |
Outline of Research at the Start |
稲作農業における長期変革的な気候変動適応策の検討にあたり、現場の農家の実態と認識を適切に反映する目的の下、Future Design(FD)の手法を通じて、従来の適応策の限界および必要な補填部分を明らかにする。次に、これらを分野横断型の包括的施策案とし、具体的な実践を試みる。更に、グローバルレベルでの気候変動適応に関する最先端の学術的議論とを行き来し、前者の後者における位置づけを明確にすると共に、後者の議論の発展に貢献する。
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Outline of Annual Research Achievements |
丹後地域でのFuture Design (以下FD)については、京都南部地域も含む2地域にて3回のFD討議および討議結果の妥当性を吟味する3回の意見交換会を実施した。理由は、FDの討議を通じて描かれるヴィジョンに、実際の気候変動適応策に反映し得る実現可能性と社会的妥当性が備わっているかどうか、現代人の観点から客観的に吟味するためである。具体的には、FD討議において農業関係者、行政担当者、学術研究者各々1名ずつからなる3名の討議班を5班設け、参加者が立場の違いを前提としつつ、フラットで対等な議論を行い、各々が自ら必要な知を他者から学び取り、討議体として独創的なアイディアを生み出すプロセスの実現を試みた。理由は、稲作農業における公正で変革的な気候変動適応策を策定するためには、稲作農家のみならず、多様なステークホルダーの参画を得る必要があり、中でも適応計画への反映を担う行政担当者と、当該計画が依拠すべき基礎的知見を提供する多様な分野の研究者の参画は必須と考えたためである。さらに、FDにおいて核となる仮想将来人の立場から生み出すアイディアの独創性や、描くヴィジョンの包括性・創造性を確保するために、自由な発想にもとづいて、知見や意見の交換ができる場を確保する必要があるからである。 最終的に創出された5つのヴィジョンは、「食及びこれに関連する文化や歴史の持つ価値の見直し・持続性」「地域の自立性(地域内循環・自給自足・地域からの発信)」「農業の社会浸透(新規参入障壁の低減・撤廃)」「仕事のやりがいや人のつながりといったウェルビーイング」「農業の持続性(作物種別検討・自給率確保)」である。いずれも班における参加者の持つ専門性や知見その他の属性の差異等から、異なる強みを持つ内容となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5年度に計画していた研究内容について、丹後地域においては稲作を中心とする農業の将来像策定と、その将来像に到達するために現在行うべきことの選定までを実施した。これらを通じ、京都における農業が現在直面している課題、稲作農業の根本に根差す脆弱性、不足する補償、制度的支援等について相当程度把握することができた。また、共同研究者とともにここまでの予備的成果を論文や学会報告として公開した。 他方、上記課題の実践に、当初予定していた以上に時間と労力がかかったため、京北地域については、引き続き来年度課題とした。丹後地域での実践結果を提言にとりまとめる行程と、京北地域での実施については翌年度持ち越しとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度計画からの持ち越しについては、実践結果の提言へのとりまとめの他、成果全体をとりまとめた論文の執筆(2本)および学会報告(2回)を予定している。これらの速やかな遂行と並行し、令和6年度計画に記載している具体的施策の選定およびそのための関係者との対話・打合せを進める。 なお、3年間の研究計画に織り込んだ、本実践とグローバルレベルにおける最先端の学術的議論との行き来という観点について、令和5年度末にウェールズ国にあるOffice of Future Generations for Walesへの訪問を行った。同国は2015年にWell-being of Future Generations (Wales) Actを制定し、気候変動適応を含む将来世代の利益の配慮を制度的に組み込んでいる。訪問時に現地メンバーとともにFDのワークショップを実施して、2054年のウェールズについて参加者に仮想将来人の立場からヴィジョンを描いてもらい、そのヴィジョンが実現した経緯について議論してもらった。更に、気候変動適応を含む、将来世代が幸せに暮らせる未来の実現いう目的を共有しつつ、互いに学びあいながら今後連携していくことで合意した。令和6年度は、更に連携を進めていくことを予定している。
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