新規な始原的嫌気性鉄酸化菌の培養化による初期地球-鉄代謝生命圏の再検証
Project/Area Number |
23KJ2174
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 45040:Ecology and environment-related
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
塚本 雄也 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究センター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | 鉄酸化菌 / 初期地球海洋 / メタゲノム |
Outline of Research at the Start |
本研究は太古代の地層に広く分布する鉄酸化物鉱床(縞状鉄鉱床)の形成に関与したと考えられる嫌気性鉄酸化菌が実際にどの系統で、どのような生理代謝機能を有していたのかを生物学的に検証することを目的とする。そのために、本研究では鉄リッチな環境からの分離培養を通して、その系統・生理代謝機能を多様性を明らかにしていく。本研究により、始原的なエネルギー代謝と考えられる嫌気的鉄酸化を行う菌の知見が蓄積されることが期待される。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では申請者が複数の鉄温泉から見出した系統的にユニークな嫌気性鉄酸化候補菌の培養化を目指す。さらに、国内の他の鉄温泉からもメタゲノムデータを取得し、鉄酸化菌群のドラフトゲノムを収集し、培養化へつなげる。そして本研究で得た培養化鉄酸化菌群に対する解析により、初期地球における鉄代謝生命圏を生物学的に検証することを目的としている。今年度は(1)嫌気性鉄酸化菌の培養と(2)鉄温泉由来のメタゲノムデータの収集と解析を主に行った。 (1) 嫌気性鉄酸化菌の培養化では、溶存鉄に加え、電子受容体の候補となる物質を複数設定し、現場と同じ温度・pHにて嫌気培養を行なった。しかしながら、現時点で鉄酸化物生成する菌を確認できていない現状にある。 (2) 計10箇所の鉄温泉から17サンプル由来のメタゲノムデータを収集し、既知の鉄酸化遺伝子の有無から鉄酸化候補菌の系統多様性と培養化を目指す菌の選定を行なった。合計で2300個ほどの高品質な微生物のドラフトゲノムの再構築に成功し、そのうち鉄酸化遺伝子を有する菌は513個であった。これらの中にはこれまで鉄酸化能が報告されてこなかった系統も多数存在した。今後はこれらの情報をもとに培養化を試みる予定である。さらにこのメタゲノムデータを比較することで、鉄温泉に共通して存在する系統を明らかにできた。さらにこれらの菌は鉄・炭素サイクルに寄与している可能性が高いことがわかった。鉄温泉は初期地球海洋の模擬環境として研究されてきており、本研究で得られた知見は当時の微生物生態系を考える上で重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)本研究の主目的である嫌気性鉄酸化菌の培養化には至らなかった。この点は来年度に向けて方策を練っている。一方で、本年度は(2)鉄温泉由来のメタゲノムデータ収集により、予想以上にさまざまな系統に鉄酸化菌が分布している可能性を示せた。その中には系統位置的に興味深い菌も存在することから、これらの菌を中心に来年度は培養化を進める予定である。また、新たな展開として鉄温泉メタゲノムデータの比較により、初期地球海洋の模擬環境として有用な鉄温泉の微生物組成や機能代謝遺伝子の共通性を見出せている。今年度で得た仮説を、来年度では、メタトランスクリプトーム解析などにより実証することで、微生物生態学的観点からも評価したい。以上の点から本研究は概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 嫌気性鉄酸化菌の培養化を達成すべく、これまで用いてきた液体培地のみならず、ゲル濃度の条件を振った固体培地や添加物・培養温度・pHなどさまざまな条件で実施する予定である。また、(2)で得たメタゲノム情報により、いくつかの温泉環境から得られた鉄酸化菌ゲノムをもとに培養条件を選定し、培養化を目指す。 (2)鉄温泉由来の比較メタゲノム情報より、共通して存在する微生物系統や機能遺伝子群を明らかにできた。これらの微生物系統が鉄・炭素サイクルに関与しているという仮説を立てられたことからメタトランスクリプトーム解析などにより実証することで、鉄に富む環境で鍵となる微生物系統や生理代謝機能を明らかにしていく予定である。
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Report
(1 results)
Research Products
(4 results)