Project/Area Number |
23KJ2183
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 28010:Nanometer-scale chemistry-related
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
竹内 祐貴 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | 金ナノ粒子 / プラズモン / ナノ加工 |
Outline of Research at the Start |
赤外線に応答する金属構造体は,赤外吸収分光のシグナル増強技術である表面増強赤外(SEIRA)分光にしばしば応用される.特に,構造体の応答(共鳴)波長とターゲット分子の吸収波長が重複することで,分子のシグナルが際立つ「レゾナントSEIRA」は分子の極微量検出を可能にする.これらの金属構造体の低コスト化や大量生産化のためには,自己組織化のようなボトムアップ的手法を利用した作製法の開発が必要となる.本研究では,光をトリガーとする金イオン還元を用いて,SEIRAで使用される波長領域(3-11 μm)で共鳴波長が制御された数珠つなぎ金ナノ粒子を作製し,赤外ガスセンサへ応用する.
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Outline of Annual Research Achievements |
赤外吸収分光を用いたガスセンサは検出感度やリアルタイム計測などに関して改善の余地が未だ残されている.これらの課題を解決するために,数珠つなぎ金属ナノ粒子を用いた高感度ガスセンサの開発を行っており,本年度では,鎖状金ナノ粒子オリゴマー内で粒子同士が光照射による金イオン還元を介して接合される様子の観察やそれによる共鳴波長シフトの観測および赤外分光で使用可能な構造の設計を行った. まず,金ナノ粒子が固定されたガラス基板を作製し,その基板を金イオン水溶液に沈め蛍光ランプで光照射を行った.固定された金ナノ粒子の電子顕微鏡像を光照射の前後で比較したところ,光照射によりナノ粒子間で結晶が析出していることが明らかになった.また,金ナノ粒子オリゴマー溶液に金イオンを加えて光照射を行ったところ,ガラス基板上に固定したときと同様に粒子間に結晶成長が起き,粒子が接合されることを高分解能電子顕微鏡により確認した.この析出した結晶の元素分析をエネルギー分散型X線分析によって行ったところ,金が析出していることが示された.さらに,このナノ粒子の金による接合によってオリゴマーの共鳴波長が可視から近赤外にシフトすることを観測した.この共鳴波長シフトは電磁場計算によって得られたナノ粒子の接合による共鳴波長シフトのふるまいと一致している.最後に,ナノ粒子の接合によって共鳴波長を近赤外領域より長波長側にシフトさせるために電磁場計算を用いて数珠つなぎ金ナノ粒子の幾何因子と共鳴波長の相関関係を調査した.これにより,構成粒子が多く,大きく,ナノ粒子を接合する金の直径が細いほどその共鳴波長は長波長側にシフトすることが明らかになった.また,単純な金ナノ粒子の代わりにシリカ-金コアシェルナノ粒子を構成粒子に用いて数珠つなぎにすると,赤外分光に使用する波長範囲で共鳴波長の制御が可能になるという見通しが立てられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り,数珠つなぎ金ナノ粒子の幾何因子がその光学特性に及ぼす影響を電磁場計算で確認することができた.また,それをもとに中赤外領域に応答を示すナノ粒子の形状にある程度の目処がついている.最後に金属ナノ粒子を光照射による金属イオン還元でつなぐノウハウは十分習得しており,以上のことから研究はおおむね順調に進展していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの実験に用いた金ナノ粒子の鎖状オリゴマー溶液は,数日ほど経過するとオリゴマー同士で凝集してしまうため,その安定性に問題があった.そこで今後の研究の推進方策として,まず,凝集しづらい金ナノ粒子オリゴマーの作製法開発に着手する.手段としては,塩やリンカー分子,溶媒を変えながら凝集がしづらい安定な鎖状オリゴマーの作製に努める.また,それと並行してシリカ-金コアシェルナノ粒子の合成やその接合実験にも取り掛かる.このコアシェルナノ粒子の共鳴波長は粒子の直径と金層の厚みで変化するため,比較的作製が容易な鎖状のナノ粒子三から四量体で赤外線に応答を示す数珠つなぎナノ粒子になるように構成コアシェル粒子の直径,金層の厚み,および接合部の太さを電磁場計算により決定する.この計算結果を元にコアシェルナノ粒子の合成とその鎖状オリゴマーの作製に着手する.ここで,三量体や四量体が選択的に生成されるように作製法の開発に努める.ここに金イオン溶液を加え,光照射を行い数珠つなぎにして共鳴波長を近赤外から中赤外領域にシフトさせる.光源として波長可変レーザーや量子カスケードレーザーを用いる.これらの光源で金イオン還元が起こらなかった場合,白色光源や紫外レーザーを用いてイオン還元を誘起する.中赤外領域への共鳴波長シフトは赤外吸収分光法を用いて確認する.共鳴波長のシフトを確認後,金に特異吸着する分子(チオール基を持つ分子など)を用いて赤外吸収スペクトルのバックグラウンドを極限まで低減させ,シグナル/バックグラウンド(S/B)比の増強を達成する.金に特異吸着する分子のS/B比の増強を確認後,二酸化炭素等のガス分子でも同様にS/B比が増強することを観測する.これにより高感度なガスセンサを開発する.
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