Project/Area Number |
23KJ2235
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 01060:History of arts-related
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Research Institution | International College for Postgraduate Buddhist Studies |
Principal Investigator |
檜山 智美 国際仏教学大学院大学, 仏教学研究科, 研究員
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Project Period (FY) |
2023-10-02 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,770,000 (Direct Cost: ¥2,900,000、Indirect Cost: ¥870,000)
Fiscal Year 2026: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | 仏教美術史 / 仏教壁画 / クチャ / 石窟寺院 / シルクロード / 西域仏教 / 顔料・絵画材料 / 交易 |
Outline of Research at the Start |
シルクロード各地の仏教寺院址では、5~6世紀頃から、ユーラシアの特定地域でしか生産されない高価な顔料・絵画材料が集中的に用いられるようになった。本研究課題は、これらの絵画材料の使用状況を手掛かりに、6世紀前後におけるシルクロードの仏教ネットワークと顔料交易の諸相について新たな側面を描き出すことを目的とするものである。近年大幅に進展した保存科学分野における顔料・絵画材料に関する研究成果を参照しつつ、6世紀前後のユーラシアの仏教遺跡に見られる絵画材料の使用状況を、文献史料及び仏教文献に表れる顔料関連の記録と共に整理し、各地域における地政学的状況や仏教文化の文脈の中で新たに位置づけることを試みたい。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の第一年目に当たる2023年度は、10月期採用であったため半年間のみの研究期間となったが、研究協力者の筑波大学の谷口陽子氏の助力を得ながら、先行研究を収集・整理しつつ、東京国立博物館や韓国の国立中央博物館などにおいて関連作品の調査を実施した。 また、西域の仏教石窟寺院の壁画に見られる絵画材料・顔料の変化について、その前提となる歴史・文化史的文脈を整理し、国内外での学会・研究会等における口頭発表を行い、また3本の関連論文を執筆した。特に11月にカリフォルニア大学バークレー校において開催されたクチャに関する国際学会では、クチャの説一切有部系石窟寺院の変遷と、壁画に見られる絵画材料・顔料の変化、そしてシルクロードの地政学的状況及び交易路の変化が連動している可能性について口頭発表を行い、参加者からの有益なフィードバックや、関連分野の研究に関する最新の情報を得ることが出来た。 また、応募当初の受入予定機関を変更し、国際仏教学大学院大学に着任したことにより、本学の日本古写経研究所が手掛ける、国内所蔵の彩色挿絵入り敦煌写本の調査をする機会も得て、3月には関連の国際ワークショップも主催した。当初の研究計画では石窟壁画の分析に的を絞っていたが、本調査を経て、同時代・同地域の壁画以外の媒体に描かれた絵画の顔料・絵画材料も、絵画材料の歴史的状況を復元する上で重要であるという気付きを得ることが出来たため、次年度以降の研究計画に反映してゆきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5年度の研究計画として、東部ユーラシアの6世紀前後の仏教遺跡における顔料・絵画材料の使用状況に関する保存科学分野の先行研究を収集・整理することと、遺跡の年代と地域、顔料の純度、使用箇所などに関するデータを整理することの二つの作業を進めることを予定していたが、実際には前者の作業に注力する形となった。なぜなら、先行研究を収集する中で、現在、本課題の研究計画と多々重なるところがある研究を遂行している国外研究者が数名いることを知り、本人たちと直接研究情報を交換して、最新の先行研究を入手することが出来たため、これらの先行研究を踏まえて研究計画を多少修正する必要が生じたためである。また、本来予定していた韓国中央博物館等における壁画の調査に加え、国内の諸博物館・研究機関における西域の仏教壁画・彩色木箱・写本等の多様な資料の調査も行うチャンスを得られた。これらの資料調査に当たり、西域の壁画のみならず、同地域の別の素材の彩色に使用されていた絵画材料に関する先行研究も収集する必要が生じたこともある。 これらの調査・研究を通して、新知見及び次年度以降の研究計画への具体的な展望を得られたことに鑑みると、本課題は現段階でおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通り、本年度の研究を進める中で、現在、数名の国外研究者が、本課題と重なるところの多い、仏教石窟壁画の絵画材料・顔料の変遷とシルクロードの歴史背景を関連付けた研究をしていることが判明した。特に一名の研究は、本課題の研究計画と多々重なるところがあることが分かったが、幸い本人たちから刊行準備中の論文の草稿をご提供頂いた。そのため、次年度以降の研究計画をこれらの最新の先行研究を踏まえたものに修正し、これらの研究者たちによってまだ検討されていない点、すなわち絵画材料・顔料の具体的な交易ルートと説一切有部僧団の超域ネットワークの問題、図像に反映された色彩に対する価値観、そしてトカラ語Bの「色指定」の問題に重点的に取り組みたいと考えている。 また、当初の研究計画では石窟壁画の分析に的を絞っていたが、本年度の作品調査を経て、同時代・同地域であっても、異なる素材で制作された作品に用いられた絵画材料及び技法はかなり差異があるという可能性が浮かび上がってきた。そのため、次年度以降の課題においても、同時代の同地域において様々なタイプの彩色美術作品が出土している場合、可能な限り比較参照し、各地域における絵画材料の使用の歴史的状況に関する全体像を掴むことを試みたいと考えている。
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