Project/Area Number |
23KK0001
|
Research Category |
Fund for the Promotion of Joint International Research (International Collaborative Research)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 1:Philosophy, art, and related fields
|
Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
佐藤 直樹 東京藝術大学, 美術学部, 教授 (60260006)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横山 梓 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸企画部, 主任研究員 (00596736)
林 みちこ 筑波大学, 芸術系, 准教授 (40805181)
池田 祐子 独立行政法人国立美術館京都国立近代美術館, 学芸課, 学芸課長 (50270492)
鷲頭 桂 独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館, 学芸部博物館科学課, 主任研究員 (90590448)
|
Project Period (FY) |
2023-09-08 – 2028-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥21,060,000 (Direct Cost: ¥16,200,000、Indirect Cost: ¥4,860,000)
Fiscal Year 2027: ¥6,370,000 (Direct Cost: ¥4,900,000、Indirect Cost: ¥1,470,000)
Fiscal Year 2026: ¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2025: ¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2024: ¥5,590,000 (Direct Cost: ¥4,300,000、Indirect Cost: ¥1,290,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
|
Keywords | 皇室外交 / 西洋美術史 / 日本美術史 / ドイツ / 北欧 |
Outline of Research at the Start |
西欧における日本美術の影響は、19世紀後半のフランスを中心としたジャポニスム研究で多くの成果があげられた。美術商を通じた工芸品や浮世絵の西欧への流入、万博での日本美術出品などがその契機とされた。しかし、西欧と日本の皇室外交については近年、英国を中心に調査が始まったばかりで、ドイツおよび北欧に関してはほぼ未着手なため、課題が多く残されている。本研究では、日本に残された皇室外交史料をもとに、西洋美術史と日本美術史研究者がチームとなり調査研究を行う。領域横断的な協力体制によって、これまで等閑視されてきた日本美術品に光を当て、最終的には、美術史学の視点から皇室外交によるジャポニスムの再構築を目指す。
|
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、研究期間が短いことから海外調査は行わずに、日本国内において資料収集に集中した。3月28日には東京の皇居三の丸尚蔵館で研究集会を開催し、これまでの研究調査報告と次年度の研究方針を確認した。研究集会でメンバーが顔を合わせることで各自の研究対象と研究計画を共有し、自分の研究対象の調整に多いに役立つものとなった。収集資料は各人が行ったが、全員で共有すべき資料を入手できたことは大きい。外交がもたらした美術作品の交流に関する調査研究が、すでに英国とフランスで行われており、本研究のモデルとなるからだ。両者とも、皇室外交ではなく、幕末の混乱期の交流であるが、日本美術が西洋の王室にもたらしたインパクトが十分に調査され、それらの研究報告を兼ねた展覧会が開催されており、その展覧会カタログから方法論を参照することができる。 また研究集会では、尚蔵館のメンバーから所蔵作品展示の説明を受けながら「皇室のみやび-受け継ぐ美」展に展示中の皇室コレクションを調査した。見学の後の研究集会では、各人が本年度に行った調査報告と来年度の研究方針を報告があった。また、尚蔵館の芳澤氏と木谷氏による皇室外交文書の調査の成果が資料として提出され、今後の調査の方向性が見えてきた。この両名の調査が当初の予想以上の成果を上げていることから、2024年9月後半に実施予定のドイツ・北欧での現地調査の進展が期待される。 海外連携研究者は、来年度の訪問調査に向けて、現地に所蔵される日本美術品および皇室関係の文書、写真資料の基礎研究を開始した。とりわけ、ミュンヘンとドレスデンでは、日独外交でもたらされた作品をいくつか特定し、それらの入手経路を明らかにしてくれる資料も発見している。他の王室コレクションについては、まだ具体的な日本美術作品の選定にまで進んでいないものの、来年度の現地調査で見極められるだろう。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
皇室の贈答品が海外にもたらされた件に関して、各人が集中的に文献調査を行い多様な資料が集まった。なかでも英国王室のコレクションを調査した展覧会のカタログ『海を渡った日本と皇室の文化』(2020年)は、300年の日英交流を美術品から徹底的に調査したものである。英国王室が所蔵する日本美術についてはこれまで全く知られておらず、その全貌が初めて明らかにされた貴重な研究成果と言える。また、徳川幕府とフランスの外交による贈答日本美術を国際的チームで調査した成果が展覧会カタログ『フォンテーヌブロー宮殿の日本美術-芸術と外交』(2021年)にまとめられている。1862年の遣欧使節団の贈答品を中心に徳川幕府が欧米諸国に贈られた「もの」がフランスに与えた美術的影響を明らかにしている。両者とも、本研究の方法論的なモデルとして重要な基礎資料となるが、同時に、ドイツと北欧諸国の外交が含まれていないことから、これらの領域を調査する本研究によって日本の外交と贈答品が及ぼした影響が全欧州的に見通せることが再確認された。 本年度の主要な学術的成果としては、皇居三の丸尚蔵館の芳澤氏と木谷氏が中心となり、宮内古文書館および外務省外交史料館における調査が挙げられる。芳澤氏は、宮家の記録及び日誌から明治初期の皇族の外遊について網羅的にまとめあげ、まずは明治期の「皇族外遊録」の表を作り上げた。未刊行の史料も多数調査しているだけでなく、各宮家を横断して皇族の訪問目的、訪問先、加えて随員までもまとめた資料はこれまで作られてこなかった貴重な成果である。また、木谷氏が「外交贈答録」「外賓接待録」を中心に史料調査を集中して行い、送り先と贈答品目のリストを制作したことで、次年度の海外調査の品目を定める手がかりが得られた。
|
Strategy for Future Research Activity |
2年目の研究推進の方策として、海外作品調査に本格的に着手する。まず、6月にはデンマーク王室担当の萬屋氏が、コペンハーゲン大学のボーウグレーン教授を訪問し、王宮コレクションに所蔵される日本美術調査を行う。なお、ボーウグレーン教授は、9月1日より東京藝術大学の客員研究員として日本に長期滞在するため、日本での調査研究にも積極的に協力いただけることとなった。 9月下旬には、ドイツへの調査旅行を予定している。ベルリンでは、1894年の小松宮依仁親王のベルリン訪問に際しての調査、1904-05年のカール・アントン・ホーエンツォレルンの訪日に際しての外交記録調査が予定されている。ドレスデンではビショッフ氏が国立美術館宝物庫にあるザクセン王アルベルトに贈られた日本の菊花章と、ドイツ帝国外交官ツァッペが収集した写真や版画などを民俗学博物館で発見していることから、ドイツでの調査を共同で進める。ミュンヘンでは、ヴィッテルスバッハ補償基金財団のヨース氏から、バイエルン皇太子のルプレヒトが1903年に日本に訪問した際に京都で購入した屏風が、現在九州国立博物館に所蔵されている《帝鑑図屏風》である可能性が高いことがわかった。その購入の軌跡をたどるには同家の「秘密家内文書館」Geheimes Hausarchivを調査する必要があり、2024年度の訪問調査で明らかにされるだろう。旧バイエルン王家と日本との、とりわけ美術・工芸品を介しての交流について現地にて調査を行い、新たな資料の発見に繋げたい。また、ドイツの美術館調査で得られる新資料を日本に持ち帰ることで、作品の同定および外交文書の精査を尚蔵館と共同で行い、調査研究を深めていくことを目指している。 スウェーデン王家の調査については、桑原羊次郎『欧米美術行脚』を手掛かりに、林氏を中心に来年度に行うことを予定している。
|