Project/Area Number |
23KK0051
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Research Category |
Fund for the Promotion of Joint International Research (International Collaborative Research)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 13:Condensed matter physics and related fields
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 卓 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (70354214)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
那波 和宏 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (10723215)
Piyawongwatthana Pharit 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 J-PARCセンター, 博士研究員 (10986384)
古府 麻衣子 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 J-PARCセンター, 研究副主幹 (70549568)
金城 克樹 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (80981696)
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Project Period (FY) |
2023-09-08 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥20,930,000 (Direct Cost: ¥16,100,000、Indirect Cost: ¥4,830,000)
Fiscal Year 2026: ¥5,330,000 (Direct Cost: ¥4,100,000、Indirect Cost: ¥1,230,000)
Fiscal Year 2025: ¥7,020,000 (Direct Cost: ¥5,400,000、Indirect Cost: ¥1,620,000)
Fiscal Year 2024: ¥7,020,000 (Direct Cost: ¥5,400,000、Indirect Cost: ¥1,620,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | 中性子散乱 / トポロジカル磁気構造 / トポロジカル磁気励起 / 冷中性子非弾性散乱 / 中性子小角散乱 |
Outline of Research at the Start |
近年、磁性体中にトポロジカルな磁気構造や励起が相次いで発見されており大きな注目を集めている。スピン量子数の小さな量子磁性体におけるトポロジカル磁気構造・励起の探索と解明は現代の量子磁性研究の重要課題であり、中性子散乱は磁気構造・励起を精密かつ直接的に観測できる唯一無二の手法である。 本研究で我々は米国オークリッジ国立研究所および豪州原子力研究機構の研究者と共同で、トポロジカル磁気構造・励起の探索と解明を行う。海外施設の有する高強度高分解能中性子散乱装置群を中心に、我が国の中性子散乱装置を相補的に使用することで、トポロジカル磁気構造・励起の学理を構築する。
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Outline of Annual Research Achievements |
研究開始初年度、中性子散乱研究においては種々の磁性体におけるトポロジカル磁性の探索研究を行なった。これまでに我々のグループで磁気テクスチャー研究が進んでいるYb3Ru4Al12や、準結晶関連物質である近似結晶中の磁気構造に関する研究に格段の進展があった。前者では磁気相図の磁場方向依存性がおおよそ確立し、現在出版に向けた最終解析を行っている。また、後者に関してはトポロジカル磁性として興味深いヘッジホッグ構造と類似の(ただし残念ながら完全なヘッジホッグではない)構造を発見するなど非常に興味深い進展が見られている。磁気励起に関してもAu-Al-Tb1/1近似結晶を用いた中性子非弾性散乱実験によりスピン波励起を近似結晶においてはじめて観測することに成功し、スピン波が線形分散を有しかつギャップレスであることを突き止めた。トポロジカル磁気励起の観点からはジャロシンスキー・守谷相互作用が支配的なスピン波励起を Cu2(MoO4)(SeO3) において確認し、その解析を進めている。関連する実績としてランダムネスとフラストレーションにより実現するスピングラス状態の励起特性を調べるため、典型的なスピングラス物質であるCuMn合金および鉄アルミノ珪酸ガラスの中性子非弾性散乱測定を行った。ボーズ因子でスケールされる局所磁気励起が共通して存在すること、また磁気励起のエネルギーは磁気相関の強さに応じて大きく変わることを明らかにした。この局所磁気励起は、構造ガラスで普遍的にみられる局所振動励起(ボゾンピーク)と類似点が多く、クエンチされた無秩序系に普遍的な現象だと考えている。また新物質探索の一環としてY-Ru-Sn系とLu-Ru-Sn系において新物質の合成および超伝導性の可能性を発見、Cr-Ge系およびSc-Cr-Ge系において物性報告のない既知物質の合成を行い磁気秩序を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度はこれまで日本側グループが進めてきた研究が連続的に進展しており、すでに多くの成果が得られている。特にトポロジカル磁性の可能性が三角格子量子磁性体や準結晶近似結晶に発見されたことは今後の本研究のさらなる進展につながる非常に大きな成果だと言える。また、トポロジカル磁気励起の観点からはジャロシンスキー・守谷相互作用が支配的なマグノン分散の観測も大きな意味があると考えており、詳細な解析を進めることでマグノントポロジーを発見したい。また関連する研究としてスピングラス系にて新規な発見があり、また物質合成に関しても着実な成果が得られている。海外連携としてはYb3Ru4Al12の小角中性子散乱に関して米国ORNLグループと共同で研究を進めており着実に連携がスタートしている。また、準結晶近似結晶における磁気構造解明も豪州ANSTOグループと共同で研究がスタートしている。本年度発見されたその他の数々の磁気秩序・励起や新物質に関しても米国ORNLグループおよび豪州ANSTOグループとの議論を始めており、この意味でも海外連携は着実にスタートしている。
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Strategy for Future Research Activity |
量子系におけるトポロジカルスピンテクスチャーに関しては、今後量子モンテカルロ法等の数値計算との対比からその存在を確立することが急務と考えており、本年度はこの方向に注力したい。また、新規なトポロジカル磁気構造の発見に関しては単純な磁性体から準結晶近似結晶等の複雑結晶まで種々の磁性体に関してその磁気構造研究を進めることで発見を目指す。磁気励起に関しても初年度得られた種々の研究の芽をさらに発展する形でトポロジカル磁気励起の発見を目指したい。とくに準結晶近似結晶で見られたスピン波的磁気励起に関しては、Tb3+のようなイジング異方性の強い系でなぜ磁気励起が線形かつギャップレスな特徴を示すのかは不明のままである。この新しい磁気励起の解明は急務と考えている。またスピングラス系に見られた新たな進展から、今後はイジング的スピングラス(Fe,Mn)TO3の磁気励起をしらべ、磁気異方性による励起スペクトルの変化を明らかにしたい。また、広いFe濃度を調べることにより、スピングラス相だけではなくリエントラントスピングラス相の動的構造を解明する。物質合成の観点からは、Ce系やYb系などの量子スピン物性が期待される物質の開発を継続的に行う。このような研究においては、海外中性子研究者との磁気構造・磁気励起測定における連携、および国内研究における新物質開発・新現象探索が重要である。したがって、二年度はこれまでにも増して、中性子散乱国際連携と国内での新物質開発・新現象探索に注力したい。
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