新国際共同実験sPHENIXによるQGP中のパートンエネルギー損失機構の解明
Project/Area Number |
23KK0057
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Research Category |
Fund for the Promotion of Joint International Research (International Collaborative Research)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 15:Particle-, nuclear-, astro-physics, and related fields
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
蜂谷 崇 奈良女子大学, 自然科学系, 准教授 (10589005)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
糠塚 元気 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (00824864)
下村 真弥 奈良女子大学, 自然科学系, 准教授 (70555416)
秋葉 康之 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 室長 (80192459)
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Project Period (FY) |
2023-09-08 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥20,930,000 (Direct Cost: ¥16,100,000、Indirect Cost: ¥4,830,000)
Fiscal Year 2026: ¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
Fiscal Year 2025: ¥6,370,000 (Direct Cost: ¥4,900,000、Indirect Cost: ¥1,470,000)
Fiscal Year 2024: ¥7,540,000 (Direct Cost: ¥5,800,000、Indirect Cost: ¥1,740,000)
Fiscal Year 2023: ¥4,810,000 (Direct Cost: ¥3,700,000、Indirect Cost: ¥1,110,000)
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Keywords | クォーク・グルーオン・プラズマ / sPHENIX実験 / RHIC加速器 / ジェット / エネルギー損失 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、ハード散乱で生じるジェットを用いて、高エネルギー重イオン衝突で生成されるクォークグルオンプラズマ(QGP)の物性の解明に取り組む。RHIC加速器sPHENIX実験で2024年に陽子衝突、2025年に金原子核衝突実験を行う。この期間、シリコン飛跡検出器INTTを安定稼働させジェット測定に必要な高統計データを収集する。 また収集したデータを用いて金原子核衝突の衝突形状とジェットの運動量分布を同時に測定し、陽子衝突の結果と比較することで、ジェットがQGP中で損失するエネルギー量を衝突形状毎に決定する。これによりエネルギー損失量の法則性を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
クォークグルーオンプラズマ(QGP)中のエネルギー損失機構を解明するための新しいsPHENIX実験が2023年5月から始まった。 本研究を進めるためにはsPHENIX実験の検出器が確実に動作し、大量のデータを収集することが必須である。 同年9月まで行われた実験期間中、蜂谷、共同研究者、学生らはBNL研究所に滞在し、RHIC加速器による金ビーム衝突および宇宙線を用いた検出器の試運転および物理データ収集を行った。 我々が建設し、運転を担当しているストリップ型シリコン飛跡検出器INTTは、試運転の期間に運転パラメータを調整し、安定してデータ収集できる条件を整えることができた。 収集したデータの品質は、不良チャンネルの割合やヒット位置の再構成などを用いて確認した。 また、測定したヒット位置から粒子の飛跡を再構成し、その飛跡を用いて金ビームの3次元衝突位置をsPHENIX実験で最初に測定した。 実験期間終了後は、物理結果を論文にまとめるためのデータ解析を進めている。2023年11月には台湾中央大にてsPHENIX-INTT検出器解析会議を行った。 初年度のINTTの運転状況およびデータ解析をまとめた結果は、分野最大の国際会議であるQuarkMatter2023で、ポスター発表として報告し(タイトル:The Intermediate Silicon Tracker of sPHENIX)、Goodポスター賞に選ばれた。また2024年3月に開催された日本物理学会にて、sPHENIXおよびINTTのデータ解析結果を6件報告した。 加えて、本研究で進めるQGP中のエネルギー損失機構の研究として、これまで進めてきたデータ解析をまとめた論文がPhys.Rev.Dに掲載された。これは重クォーク種を識別し、QGP中のエネルギー損失がクォーク種によって変化するかどうかを測定した論文である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年のsPHENIX実験期間では、我々が担当しているストリップ型シリコン検出器INTT、および電磁カロリメータ、ハドロンカロリメータは調整が完了し、金ビーム衝突による実験データを収集することができた。 このデータを解析し、INTTの稼働率は全チャンネルの93%であることが分かった。 sPHENIX実験開始前の稼働率は95%だったので、設置・運転によって新たに増加した不良チャンネルが2%程度に低く抑えられていることを示している。 ヒット位置の再構成に用いる検出器の絶対位置は、3次元測量により精度よく決めることができており、データ解析でも精度が確認できている。 本研究では、金+金衝突事象を生成粒子密度や反応平面を用いて、QGPを条件分けし、エネルギー損失の大きさを系統的に測定する。このためにINTT検出器やミニマムバイアス検出器(MBD)を用いて生成粒子密度や反応平面の測定を進めている。またジェット測定に向けて、INTTを用いた飛跡再構成法を開発を進めている。 一方、試運転期間、INTT以外の2つの飛跡検出器は上手く稼働できなかった。 調査の結果、大量のビーム起源バックグラウンドなどが原因で、検出器が停止したこと分かった。 この対策として、ビームバックグラウンドを除去するための新しい遮蔽材の導入などが進んでいる。 2023年8月、RHIC加速器が故障し、2か月間の実験期間を残したまま、初年度の実験を中止することになった。 その後の調査で、RHIC加速器の超電導電磁石が大きく破損していることが判明し、復旧にはこの電磁石を取り換える必要があること、少なくとも半年は必要であることが分かった。 このため2024年の実験開始は当初の予定より遅れたが、修理が順調に進んだため、2024年度の実験は4月に開始されることに決まった。 この時期に合わせBNL研究所への滞在計画を修正する。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年は陽子ビーム衝突による実験を行う。陽子同士の衝突では QGPは生成されないが、QGPが生成された時との比較の為に必要不可欠な測定である。 2023年のRHIC故障の影響で当初計画より渡航時期を遅らせ、2024年4月から蜂谷および学生らがBNLに滞在し、現地の共同研究者と協力して、確実にデータを取るために準備・実験・データ解析を行う。 本研究の目的であるジェットを測定するために、粒子の飛跡を測定する飛跡検出器と、粒子のエネルギーを測定する電磁カロリメータ、ハドロンカロリメータを組み合わせるた測定法の開発を進める。 粒子の飛跡測定ではsPHENIX実験の飛跡検出器のうち、一番安定して稼働しているINTTを核として飛跡を再構成し、他の飛跡検出器の情報を追加することで再構成の精度を高める。 金+金衝突で生じるジェットを検出する手法は、これまでシミュレーションを用いた開発を進めてきたが、今後は2024年に収集する陽子衝突データも活用する。 陽子衝突では、金衝突で発生する大量の低運動量粒子が存在しないので、陽子衝突のデータとシミュレーションを比較することで、ジェット検出法の有効性を検証することができる。
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Report
(1 results)
Research Products
(12 results)