スウェーデンにおける労働市場への参加を通した移民の社会統合に関する研究
Project/Area Number |
24530280
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Research Field |
Applied economics
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
篠田 武司 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (20115405)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Project Status |
Discontinued (Fiscal Year 2012)
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Budget Amount *help |
¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2014: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2013: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2012: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | 難民 / 労働市場 / 社会統合 / 雇用事務所 / スウェーデン / 多文化主義 / 移民 / 労働市場への統合 |
Research Abstract |
スウェーデンは、「移民に対して社会権に基づく包含的政策」、すなわち最も寛大な統合政策を行っている国だといわれている。他の諸国が移民の流入を抑制し、また移民の福祉へのアクセス、あるいは国籍取得に対して厳格な義務を課しているにもかかわらず、スウェーデンでは、少なくとも移民の数が多いとは、主要な各政党、あるいは国民も,そうしたことを考えてはいない。移民の福祉へのアクセスも、スウェーデン国内に定住する人は、等しく市民と同様に社会権を有するとし、平等に扱われてもいる。しかし、現実は、移民、特に非西欧からの難民の経済的状況は深刻であり、また社会的な差別も少なくない。こうした状況の中で、長い間、移民の統合に責任を持ってきたのは自治体に代わり、2010年、新規移民の受け入れについての責任は就労支援に蓄積を持つ労働市場庁に移すことになった。 では、こうした政策の転換によって移民・難民の労働市場への統合はうまくいっているのだろうか。この2年間、主として移民・難民が多く居住する雇用事務所を訪問し、移民の労働市場での実態と、その政策またその効果について調査してきた。また、スウェーデン内の移民・難民に関する研究者との意見交換も行ってきた。さらに、移民・難民を支援する諸組織を訪問し、それらの活動や移民・難民の人々の意見も訊いてきた。こうした調査のなかで、あらためて移民の労働市場への統合の重要さや、またその困難性が浮かび上がってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
長い間、移民の社会統合、また労働市場への統合に責任を持ってきたのは自治体だった。しかし、自治体は就労支援の蓄積はなく、結局その仕事の中心は社会サービスの給付におかれることになる。そこでは、新規移民の受け入れについての責任は就労支援に蓄積を持つ労働市場庁に移されることになった。これまでの経験から、移民に対していち早く就労支援を行えば、かれらが職を得られる機会が増えることが分かってきたからである。では、こうした制度の変更は、うまく機能しているのだろうか。そもそもどのように労働市場への統合をすすめようとしているのだろうか。これまで、移民・難民の多く居住するStockholmストックホルム、Rinkebyリンケビー, Solnaソルナ Malmoマルメ, Soderterjeソーデルテリエの各市、また比較的中程度のLundルンド、Vaxjoベクホー市の雇用事務所を訪問、インタビューをしてきた。 こうしたなかで、雇用事務所への移管による就労支援の充実(2か月以内の個人プランの作成、それに基づくインターン、補助金付雇用、また職業訓練プログラムなどへの参加、こうした最大2年間にわたる就労支援)や、また民間に委託する職業パイロット制度の導入などが一定の成果を上げていることが理解できた。しかしなお、責任部局の努力にもかかわらず多くの困難を抱えている実態も明らかになった。たとえば一つの例をあげれば、新規難民は労働市場への統合の前に、生きる意欲などの喚起が必要な場合も多く、そうした専門的なケアーの必要性などにスタッフは苦慮しているといった実体である。 全体として、当初の目的だった移民密度の高い地域での移民の労働市場での実態の把握、諸政策の内容、その効果などを知見として得ることができ、本研究の本年度たてた当初の目的は達成できたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、①スウェーデンにおける移民の歴史をまず振り返り、特に70年代以降の難民・亡命希望者という移民の増加が、労働市場、あるいは社会にどのような影響をもたらしたのか。②スウェーデンはEUの他の国と比較すると寛大な移民・難民の受け入れ政策をとってきたが、そこにはどのような理念・社会的合意があったのか。③しかし、いまそうした寛大さが一部になくなりつつあるかにもみえる。それはなぜなのか。④それは、移民の労働市場への統合が十分でないことに原因があると本研究では仮定し、では現実にはどうなのか。⑤労働市場への統合に関して、いま様々な努力・政策が実施されているが、それはどのような政策であり、またそれは成果を上げているのかどうか。そうでないとすればその課題は何か。⑥特に、2010年には新たに流入した移民にたいしての政策が大きく変わり、これまで自治体が移民の統合に責任をもっていたのが雇用事務所の責任となった。 では、このことはうまくいっているのか。こうした課題をたて、調査を行ってきた。①~③に関しては、文献や研究者との意見の交流などで深め、④~⑥については、雇用事務所、市の福祉局、移民・難民の支援団体などへのインタビューで調査を行うこととした。 2014年度は、①引き続き移民の多い地区の雇用事務所への調査(Malmo,Norrshopingノーショーピン、Gothenbergヨーテボリ)、②これまで訪問した事務所の継続調査(Lund、Vaxjo, Malmo、Solna)③労働市場庁、④雇用する側の企業(製造業を代表してVolvo, 大手小売業を代表してIkea)での調査を予定している。また、⑤マルメ大学、ストックホルム大学の研究者との交流と、ルンド、ベクホーでの支援組織でのインタビュー、⑥ベクホー大学、ストックホルム大学での文献収集も予定している。こうした調査・研究の中で本研究の目的を達成したい。
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Report
(2 results)
Research Products
(5 results)