Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
〈目的〉個々のニューロンにおける入力と出力の関係を明らかにすることは、脳がどのように情報を処理し、変換しているかを知ることである。本研究では、大脳皮質弓次視覚野(V1)のニューロンが示す刺激方位選択的なスパイク応答が、どのようなシナプス入力に基づき、どのような樹状突起内の情報統合の結果であるかを明らかにすることを目指した。そのため、遺伝子改変マウスを用いたin vivoの実験系において、2光子励起レーザ」顕微鏡によるカルシウムイメージングを実施し、ホールセルパッチ細胞内記録法を組み合わせて実験を行った。以上により、単一ニューロンにおける入出力の計算原理を究明し、複雑な樹状突起構造を持ち重複したシナプス入力が収束する機能的意義を探った。〈結果〉本研究では、方位選択性の形成に関わるシナプス入力パターンについて、1)蛍光タンパクで標識された抑制性ニューロン(GFP+)とそれ以外(GFP-)の興奮性ニューロン、2)多様なサブタイプが存在する抑制性ニューロン間(電気生理学的に同定されるfast-spikingとregular-spikingなど)で差異が見られるかを調べた。興奮性・抑制性の何れのニューロン群についても、視覚刺激由来のカルシウム信号を樹状突起から記録することには成功したが、シナプス前ニューロンからの入力を安定して加算記録することは、我々の実験システムにおいては実現不可能であった。ただし、当該年度末に新たに導入したGaAs(ガリウム・ヒ素)を用いた結晶光電面のイメージングデバイス(光電子増倍管)を用いた場合、有意に信号強度が改善されることが分かった。本方法を用いた場合、先行研究同様に(例えば、Jiaら[2010年]、Chenら[2011年])、シナプス入力を計測することが十分に可能であると思われる。