Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
【目的】先行研究において、筋不動化に伴い、筋有酸素能が低下することは報告されているが、そのメカニズムについての詳細な検討がなく、特にヒトを対象とした筋活動低下に伴う運動時の易疲労性および無酸素系エネルギー代謝の変化に関しては、報告が少ない。そこで、本研究では、筋不動化に伴う筋機能低下のメカニズムを解明するために、無酸素系エネルギー代謝の変化、ならびに有酸素系エネルギー代謝面の変化について検討した。【方法】本研究では健常成人男性を対象とし、非利き手上肢のギプス固定を3週間行った。その固定期間の前後において、筋機能ならびに筋の形態を固定群(IMM群)およびコントロール群(CON群)において評価した。【結果および結論】前腕筋横断面積は両群においてギプス固定前後で変化しなかった。一方で、最大随意収縮力(MVC)、筋有酸素能はCON群では変化しなかったが、1剛群において有意に低下した。また、30%MVC強度で1秒に1回の動的グリップ運動を疲労困憊まで行ったときの最大仕事量はCON群では変化しなかったが、IMM群において有意に低下した。さらに、無酸素系エネルギー代謝の関与の算出は、運動中のクレアチンリン酸(PCr)分解率よりATP-PCr系を、運動中のpHの変化から求めた水素イオンの生成量から解糖系を、それぞれATP生成率として算出した。その結果、無酸素系ATP生成率はギプス前(0.581mmol/kg ww/sec)に対し、ギプス後(0.849mmol/kg ww/sec)に増加したが、運動時間はギプス前(73秒)と比較してギプス後(55秒)に短縮した。以上の結果より、本研究で用いた上腕ギプス固定に伴い、有酸素系エネルギー代謝に加えて無酸素系エネルギー代謝の低下も認められることが示唆された。