Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
申請者は、myc誘導性B細胞性急性リンパ性白血病(以下、B-ALL/LBL細胞)モデルマウスにおいて、その細胞脆弱性がCdh1不活化により惹起されることを示唆する所見に着目し本研究を着想した。本研究では、この細胞脆弱性の原因解明を目的として、アポトーシス・分裂期細胞崩壊に主眼を置き解析した。具体的には、Cdh1を人工的に不活化したB-ALL/LBLマウスとCdh1機能正常な同疾患マウスの2群について、1-3次移植までの生存曲線・リンパ節病理切片の免疫染色・腫瘍細胞由来mRNAのマイクロアレイ解析を比較分析した。その結果、Cdh1不活化群ほど1次移植では長期生存が確認され、2次3次移植群では逆に生存期間が短縮することが確認された。また1次移植群の組織免疫染色からは、Cdh1不活化マウスの方が、細胞死エリア数が優位に多くかつ総面積としても大きいことが確認され、その大部分がTUNEL染色陽性のアポトーシスを起こしていることが確認された。更に、細胞死エリア内のγH2AX陽性細胞数、pHH3陽性細胞数が優位に多いことから、この細胞死の一因として、Cdh1不活化によりG2/Mチェックポイントが破綻することで起こる分裂期細胞崩壊があることが示唆された。この現象を裏付けるように、マイクロアレイ解析からはDNA修復機構・M期関連因子に関連する遺伝子セットに優位な差が認められた。「Cdh1不活化による造血器悪性腫瘍細胞の脆弱化」が治療戦略として妥当か否かという観点において、本研究は臨床的にも重要な意義がある。すなわち、このようなDNA修復機構の破綻を介した腫瘍細胞脆弱化を悪性腫瘍治療戦略とする場合には、本モデルでの2次移植・3次移植群で見られたような、より悪性度の高い再発を惹起する危険性に留意せねばならないと考えられる。