Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
ヘリウム液面上で、電子を一つ一つ制御する技術、特にその量子状態の制御が実現できれば、量子計算の実現に大きな前進となる。このような有用性はさておくとしても、理想的な量子的対象である電子一つを取り出して、液体ヘリウム表面という清浄な舞台において、つぶさにその量子的性質を研究する可能性には、好奇心を大いに刺激するものがある。この研究計画では、そのような技術開発の一環として、表面張力によって固体表面の細い隙間に凝縮(毛細管凝縮)した液体ヘリウムの表面を利用して電子を制御する方法を開発し、狭窄した伝導路を電子が一つずつ透過するときに現れる輸送特性について研究することを目的として実施した。毛細管凝縮した液体ヘリウムを使うことによって、液面直下(1μm程度)に安定した電極構造を作成できるというメリットがある。この手法によって、スプリットゲート方式のポイントコンタクトを作成することに成功し、ピンチオフ閾値の近傍で伝導度に階段状の異常が現れることを発見した。低温条件下で、電子系がウィグナー結晶という格子を組むと、狭窄を解くに従って、伝導度がいったん増大したのちに減少するという非常に変わった輸送特性を発見した。これを、計算機シミュレーションと比較した結果、静電ポテンシャルの空間的な構造とウィグナー結晶の格子構造とが、幾何学的な整合を有するところで、伝導度が減少することを突き止めた。さらに、一様な1次元チャネルの幅を変えていく時に、n列と(n+1)列構造の静電エネルギーが拮抗するところで、熱的擾乱によって、空間的な結晶秩序が破壊される傾向が現れるために起きると推察される伝導度の振動を発見した。今後、この機構についてより定量的な研究を行う必要がある。
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Phys. Rev. Lett.
Volume: 108 Issue: 17 Pages: 176801-176801
10.1103/physrevlett.108.176801
Volume: (掲載確定)