Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
災害発生後に地域全体で適切な行動をとれるようにするためには、防災対策を机上で検討するのみではなく、災害発生後の状況を想定した訓練を実施することが地域の取り組みとして肝要である。より実践的な訓練を実施することによって、地域住民の危機意識や地域全体の対応能力も高められるようになるとともに、現状の地域の防災上の課題も顕在化する。それによって、災害に関する問題の理解だけでなく、解決策がみえてくると考えられる。そこで本研究では、来たる東海・東南海・南海地震等の巨大災害に備えるための実践的防災訓練の企画・設計及び実施を通じて、地域の課題や減災に関する地域の機能を評価するとともに、防災訓練の効果を検証し、減災性能を地域に組み込むための方策を検討することを目的として実施した。調査対象地域は、津波浸水危険地域(和歌山県みなべ町沿岸部地区)、中山間地域(みなべ町山間部地区)、観光地(和歌山県白浜町)である。各地域において、ワークショップの実施によって地域の課題と対策のあり方を検討するとともに、実践的防災訓練に取り組んだ。みなべ町沿岸部においては、小学校と地域が連携した津波避難訓練に取り組んだ。一部の区域では、平日の中間に訓練を実施することにより、地域内に青年層の住民が残っている割合が少ない状況における災害時要援護者支援等の避難時の課題が示された。また、別の地域では、車両避難を含めた避難訓練を実施し、避難に要する時間をもとに、地域の津波避難のルールを検討するための素材を得ることができた。みなべ町山間部においては、地域が孤立した状況を想定した避難訓練を地域住民と小学校が連携して実施した。これらの訓練を踏まえ、災害時に役立つ災害対応資源マップの作成に取り組むことができた。白浜町沿岸部では、海水浴場における津波避難訓練を実施した。訓練結果より、情報伝達、避難誘導体制、避難路と避難場所の設定における課題を示すことができた。