Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
治療用放射性核種またはその標識体の投与により体内のがん細胞を殺傷する内用放射線療法(以下、内用療法)は、全身にひろがったがんにも有効で、しかも副作用の少ない有効ながん治療として期待されている。これまで、内用療法の治療効果は個体レベルで評価されることが多く、単一細胞レベルにおける線量と生物効果の相関性についての情報が不足している。本研究では、内用療法に用いられるオージェ電子放出核種1251を用いて、細胞内の特定位置にオージェ電子を配置し、放射性標識体の局在とその生物効果を検証し、より効果的な内用療法戦略を構築するための基盤を確立することを目的とした。本年度は、(1)細胞内の特定位置にオージェ電子を配置するためのプローブの設計と1251標識法の検討(2)標識体の細胞内取り込み、細胞内安定性などの基礎的検討(3)1251標識体を含む細胞の細胞内分布の検討と線量分布の算出を研究項目にあげた。これまで(1)と(2)について研究を遂行した。細胞質固定プローブと核内導入プローブを設計し、クロラミンT法で1251標識を行った。収率は共に27%と43%と低いが、放射化学的純度は97%以上で、十分に実験に使用できると判断した。TATを用いた細胞内への1251の導入は共に非常に低く、速やかな脱ヨウ素が観察された。そこでまず、細胞質固定プローブに関して、一部をDアミノ酸に改変し、さらにC末端をアミド基で保護したペプチドを設計した。その結果、脱ヨウ素が抑制され、細胞内への取り込みもLアミノ酸のものよりも2倍近く向上した。また、細胞内貯留性は20%から40%に向上した。核内導入プローブの改変や(3)については実行できなかったが、細胞質固定プローブの改変により得られた細胞内導入と貯留性の向上の成果は、1251の細胞内分布を測定するのに十分な活性もしくはヨウ素の濃度が得られる可能性を示唆し、詳細な線量分布の算出につながると考える。