Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
消化器癌細胞株に対してJARID1Bの転写活性を可視化するウィルスベクターの作成を行い、標識と追跡を実施。Fucci Systemを用いた実験系においてJARID1Bが細胞周期に関与することが分かった。ChIP AssayによりJarid1bの標的遺伝子は癌抑制遺伝子p16INK4Aであることを同定した。また、マウスを用いた異種間移植実験においてJarid1bを阻害した場合、造腫瘍能の低下と治療抵抗性の低下を認めることが分かった。その細胞内では、活性酸素レベルが上昇し、細胞老化タンパク質であるβ-Galactosidaseの蓄積が見られた。既存の癌幹細胞マーカーによりCD133、CD44、ALDHを用いて展開、Flow cytometryで得られた細胞分画はJarid1bを阻害した場合、癌幹細胞分画は有意に減少することが分かった。本研究は、Jarid1Bが「ヒストンH3第4リジン残基の脱メチル化反応を触媒する」ことにより、「癌抑制遺伝子(p16/INK4A等)のプロモーター領域をヘテロクロマチンにして癌細胞形質が悪性化する」ことを明らかにした。エピジェネティック阻害実験により、腫瘍全体の増殖が阻止されることを確認し本年4月にInternational Journal of Oncology誌において報告した。今後の展開として、大阪大学工学部とのJarid1B結晶化を進め、阻害剤ライブラリー(65,000化合物)の検索を実施し、大学をあげて早期探索および創薬の具現化に向けて事業を推進している。本研究の成果を基にして、『癌幹細胞のエピゲノム創薬』がわが国の喫緊焦眉の課題であることを踏まえて、Jarid1B創薬の開発を更に加速するために、癌幹細胞に特異性の高いJarid1B類縁のエピジェネティック制御因子にまでスクリーニングの枠を広げて幅広く展開し臨床応用のための基盤を構築する。