Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
二光子顕微鏡を用いた生体イメージングは生体内において蛍光でラベルした細胞の動態を可視化する画期的な方法論である。この技術を利用し、がん組織で起こっている現象を時空間的にとらえ解析することが可能になった。これまで知られていなかったがん細胞の挙動を可視化し癌の動きと関連する浸潤・転移に関連する分子にせまる研究は新規治療の開発が期待されている。われわれは細胞周期を2色の蛍光プローブ(G1期-赤、S/G2/M期-緑)でリアルタイムに可視化するFucci(Fluorescent Ubiquitination-based Cell Cycle Indicator)をヒト大腸癌細胞株に遺伝子導入し安定細胞株を作成した。この細胞株をNOD/SCIDマウスの皮下に移植し4~5週間後に二光子顕微鏡を用いてがん細胞の挙動を時空間的に記録した。データは画像解析ソフトを用い赤と緑の細胞を追跡しそれぞれの平均速度を求めた。さらに赤と緑の細胞の相違をみるためにFucciの蛍光たんぱくをガイドとしたcDNA マイクロアレイ(Fucci guided microarray)を行い可動性に関連ある分子を探索した。その結果G1期-赤(n=310)とS/G2/M期−緑(n=450)の細胞の平均速度は、緑の細胞の方が速かった(p=0.033)。Fucci guided microarrayから緑の細胞(S/G2/M)で高発現する可動性に関連する分子(celmobilin; 仮称)を抽出した。生体イメージングは、生体内の「ダイナミクス」から、その「メカニズム」にせまる実験手法である。我々は生体内のがん細胞の動態をとらえその現象に関わる分子を抽出した。celmobilinの機能解析と臨床病理学的検討をおこないがん細胞の細胞可動性をターゲットとした次世代分子標的薬の開発・臨床応用へ発展できるものと考えている。