Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
肥厚性瘢痕は皮膚創傷部位におけるコラーゲン線維の過剰な蓄積と炎症が特徴であり、関節、胸郭といった反復的な伸展・弛緩刺激を受ける部位に好発する疾患である。皮膚創傷のうち反復的な伸展・弛緩刺激を受ける部位に肥厚生瘢痕が生じるメカニズムは未だ不明であり治療法も確立されていない。近年、Ca channelの一種であるTranseient-Receptor-Potential(TRP)がCaイオンを流入させることで細胞への物理的機械的伸展刺激を生化学的細胞内シグナルに変換し、線維化を引き起こす可能性を示唆する報告が見られる。我々はこのTRP channelに着目し、まず皮膚における各TRPホモログの発現について調査を行った。TRP各ホモログのうち、肥厚性瘢痕ではTRPC3の発現が上昇していた。また、ヒト初代培養皮膚線維芽細胞を伸展するとTRPC3の遺伝子・蛋白発現が上昇していることも確認した。我々は、pMXs-IRES-GFP システムを用いてTRPC3 を過剰発現させたマウス由来線維芽細胞を作成し,培養細胞伸展刺激装置を用いて機械的伸展刺激を与えた。伸展下においてマウスTRPC3過剰発現線維芽細胞ではcontrol と比べ、IL-6 の発現上昇及びNFκBのリン酸化を認めた。機械的刺激によりTRP を通して細胞質内Ca 濃度が上昇、NFκB のリン酸化を引き起こし、promotor 領域にNFκB 結合部位を持つIL-6 発現上昇がもたらされると推測された。IL-6 は肥厚性瘢痕において発現上昇が認められているサイトカインであり、本研究より機械的伸展刺激が肥厚性瘢痕を引き起こすメカニズムの一部が解明されることが示唆された。
All 2012
All Presentation (2 results)