Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
抗がん医療の急速な進歩により,放射線療法および化学療法を受ける小児が増えている。これらの治療はしばしば重篤な口腔粘膜炎を惹起し,小児のQOL の低下を招く。私はこれまで,小児がん患者の口腔粘膜炎の増悪因子の探索と,予防法の開発に従事してきた。小児がん患者における口腔粘膜炎予防法の効果を評価するには,小児の口腔粘膜の状態変化を記録するのに適切な評価基準が必要になる。現在,抗がん治療によって生じた口腔粘膜炎の評価基準として臨床上よく使用されているものに有害事象共通用語規準があるが,この基準では小児の口腔粘膜炎は成人を同じグレードを用いる。しかし,細菌学的・解剖学的・病理学的に大きな差のある小児と成人の口腔を同じスケールで評価するのは適切でない。そこで今回,広島大学小児科に入院する患児のうち,放射線療法および化学療法を受ける患児を対象として,その口腔粘膜状態の変化を放射線療法および化学療法の術前・術中・術後の状態を記録し,炎症所見および疼痛の有無によってグレード分類を行った上で,「舌」「口唇および口角」「歯肉」「頬粘膜」について,臨床的に簡便に使用出来る新しい小児の口腔粘膜炎の評価基準作成を行った。また,この評価基準をもとに,マウスピース様のドラッグリテーナーと抗菌剤 (グルコン酸クロルヘキシジン)を応用した口腔除菌システム (Dental Drug Delivery System: 3DS)を骨髄抑制下にある小児に用い,その口腔内細菌の変化と口腔粘膜状態について対照群と比較し,その効果の判定を試みた。その結果,「頬粘膜」および「歯肉」で,対照群と比較してDS群の粘膜炎状態が優位に軽減した。