Research Project
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
本研究は、昭和期におけるロマン主義の動向について、文体論(表現分析)および思想史学(言説分析)という二つの方法論に拠りつつ検討し、個々の作家・思想家の著述に即して文学・思想における戦前と戦後の連続性と切断を明らかにすることを目指している。今年度は、昭和十年前後における転向の問題について、「シェストフ現象」を中心に、亀井勝一郎・三木清・小林秀雄らの言説を検討した。これは、「日本浪漫派」の言説運動を美学ではなく倫理の水準で把握し、これと戦後派文学との連続性を明らかにするための試みである。その成果は、雑誌「社会文学」の特集〈転向点・1933―文学・歴史・社会の観点から〉の論文の一篇として掲載されている。また、戦前における三島由紀夫のデカダンス受容に注目し、明治期以来の翻訳文化や少年少女文化が昭和期のロマン主義に何をもたらしたかを検討した。これは、郡虎彦・日夏耿之介ら二十世紀前半の翻訳文学と三島、さらには敗戦後まもなく興隆した無頼派のデカダンスとの関わりを検討する試みである。その成果の一端は、立教女学院短期大学「児童文学講座」の講演にて発表し、論文化のうえ同大学が公刊している雑誌「児童文学講座」として掲載した。これらの試みは、「ロマン主義」をひとつの切り口として、従来は分断的に把握されてきた戦前戦後の思想と文学とを綜合的に把握し、「昭和イデオロギー」の史的研究に新たな展開をもたらそうとするものである。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
All 2013
All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 1 results)
社会文学
Volume: 37
児童文学講座
Volume: 2