Research Project
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
くも膜下出血後の脳血管攣縮に対する新たな予防・治療法の開発のため、マグネシウムの頭蓋内血管における拡張作用機序の解明を目的に実験を行った。DaceyとDuling(Am J Physiol. 1982;243:H598-606)が開発した方法を用いた。SDラット(雄、12-20週齢)より摘出した脳から中大脳動脈を含む5 mm x 8 mm x 5 mmの脳スライスを顕微鏡下で作成し、軟膜とくも膜を利用して脳内を穿通している細動脈(レンズ核線条体動脈(直径30~100 μm))を摘出した。摘出した細動脈の両端を臓器槽に装着された微小ガラスピペットを用いてカニュレーションし、細動脈の両端を固定して、顕微鏡下に細動脈に生理的内圧を負荷し血管径を観察した。臓器槽は脳脊髄液のpHである7.3、温度は37℃に保たれた生理学的溶液を持続的に灌流した。生理的な状態における細胞外マグネシウム濃度増加による血管拡張に、脳細動脈血管内皮が関与しているかどうか明らかにするため、まず血管内皮由来の強力な血管拡張物質である一酸化窒素(NO)の関与の有無を実験した。コントロールのマグネシウムによる血管拡張を確認した後、一酸化窒素合成酵素阻害薬であるL-NNA(10μmol/L)を投与した。L-NNA存在下で細胞外マグネシウム濃度を増加させたが、血管拡張は抑制されなかった。幾つかの大血管(大動脈など)ではマグネシウムの血管拡張機序にNOが関与していると報告されているが、脳細動脈においてはNOは関与していないと考えられる。くも膜下出血後の脳血管攣縮機序においては、NOは抑制された状態と考えられている。すなわちNOが抑制されている攣縮した脳血管も、マグネシウムで拡張すると考えられ、脳血管攣縮に対するマグネシウムによる治療の有効性を一部示唆したと思われた。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。