○研究目的 全盲及び弱視者のための合理的な配慮による水彩用パレットの工夫や音声で色彩を判別する支援機器や言語による色彩の学習、また、アイパッドのアプリの色彩パレットを活用した弱視者の色彩の学習や表現についての方策を考える。 ○研究の方法 中学部の全盲生徒の色彩学習に合わせ、合理的な配慮によるパレットを試作し、授業での生徒の感想や意識の変容、弱視者を含めた数名にモニター試験を実施、評価し研究を進めた。弱視者のアイパッドの絵画表現用のアプリを使った学習指導では、複数の色彩パレットを比較し聞き取り調査を行った。支援機器に関しては、言語刺激を活用する者から聞き取りを行い、言語活用による色彩学習の基礎的な方法を検討した。 ○研究成果 試作したパレットは美術の表現活動で使用したが、全盲・弱視生徒からは、これまでにない道具で主体的に表現に活用できることから比較的評価は高い。ただ、モニター試験ではパレットの仕切りスペースの位置確認の困難さや操作感の面倒さの指摘があり、作った色は漸増面ではバランスが取れていたが、水分量が多く明度的には明るい例が多く見られた。色彩学習と表現が双方向的に行える等から生徒の自尊感情面での変化が観察でき、新たな道具の可能性や課題が明らかになった。アプリの色彩パレットは聞き取り調査で弱視生徒の使いやすさや理解しやすさといった観点からの選好には類似性があるが、見え難さで色の判別ができず色彩理論による色の並び等の理解がさらに必要であることが認められた。 支援機器の説明と色彩の説明が重複すると混乱するので、学習にはステップが必要で支援機器の活用段階は色彩理論の学習後の利用が望まれることが示された。日常で使われている色名と財団法人日本色彩研究所のPSSCによる色彩理論や支援機器で使われる言葉は隔たりがあり、早くから色と色の関係性やつながりをもたせた言い換えの配慮が必要であると推察された。
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