1 研究目的 本研究では、前任の勤務校である総合学科高校の生物科目の授業において、「環境倫理」の視点を導入し、環境リテラシーの育成を目指した環境学習プログラムの開発、試行および評価を行い、自然との共生を実感させる環境学習のあり方を解明することを目的とした。 2 研究方法 プログラム実施校では、生活・福祉系列の授業においては、生徒が近隣の幼稚園の園児や高齢者と交流する活動、農業系列においては、生徒が作物を育てて収穫する授業等が行われている。これら生活・福祉系列、および、農業系列の特色を踏まえ、本研究の目的の達成のため、「環境倫理」 の視点を取り入れた身近な自然との一体感を感じる環境学習プログラムを開発した。具体的には、ディープ・エコロジー・ワークをアレンジした「身近な植物との一体化体験」を中心とした野外体験学習を、ネイチャーゲーム「木の葉のカルタ取り」、「ミクロハイク」と組み合わせて構成し、「生物II」の履修生徒である3年生11名を対象に、校庭の草地において平成24年11月に実施した。 3 研究成果 プログラム実施後の質問紙調査の結果、参加した82%の生徒が、「身近な植物との一体化体験」において、校庭の身近な樹木との一体感を感じ、一体感を感じた生徒の100%が、その活動において心が豊かに成長した実感を持ち、参加した91%の生徒が、「ミクロハイク」において校庭の草地の動植物間のつながりを感じ、すべての生徒が、「木の葉のカルタ取り」において校庭の樹木の多様性を実感し、すべての生徒が校庭の動植物にも生を全うする権利があると感じ、91%の生徒が、大人になってからも本プログラムのような自然と親しむ活動が必要だと感じていることが明らかになった。短時間のプログラムであり、実施高校の種々の条件に規定された事例的実践ではあるが、ディープ・エコロジー思想をもとにした「環境倫理」の観点を導入した環境学習プログラムを実施することにより、約8割の参加生徒において、身近な自然において他の生命体との一体感、および、心の成長を実感させることができ、環境リテラシーの育成を達成することができた。
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