Research Abstract |
本研究は,昨年度,一昨年度に引き続き、「黒板での授業」「コンピュータの画面での表示や操作」「具体物」を直感的に生徒がとらえ,その中のおもしろさ,不思議さといった点に着目して発展的に考えられるようになるかについて検証したものである. 本年度は,本校2年生,数学Bの「ベクトル」の授業に焦点を当て上記の3点を絡めた授業展開を行った.本年度の大きなポイントは,「具体物」のひとつとして「折り紙」を導入したことにある.今回,中心的に取り上げた例題は「平行四辺形ABCDにおいて,辺CDを2:1に内分する点をE,対角線BDを3:1に内分する点をPとする.3点A,P,Eは一直線上にあることを証明せよ.」である.すでに生徒たちはk倍が示せれば3点は一直線上にあるということが「黒板での授業」から分かってはいるものの,代数的処理のみに依存してしまいkの意味するところをはじめとして「実感を伴って分かっている」とは言い難い状況にあった.そこで,この問題を折り紙を使って実際に折ってみようということを何回か実践した.まず正方形から平行四辺形を作るところで生徒たちは、試行錯誤していたが,ある生徒の感想「正方形から平行四辺形を作るのは最初はいろいろ考えてもうまくいかなかったけど,ただ単に平行な線が2組交わればいいっていうことだけに気づいたらすぐできた.難しく考えなくてよかったんだと思ってほっとした.」を見てみるとこの感想は,数学は常に「難しく考えて解くもの」ということにとらわれているところから,「そうでなくていいんだ」と,ほっとしたことをまさに表現していると感じる.そして折り紙による2:1に内分する点や3:1に内分する点の折り方などまさに「折り紙の独壇場」といったところであった.また,折り紙を使った授業では、生徒同士による相談や意見交換など,言語活動が自然発生的に生まれるメリットもあった。そして最後に,3点A,P,Eが一直線上にあることを,定規を用いることでk倍の意味を確認していった.生徒たちは「仲間のどのものも本当にそうなる」と確認し,まさに教科書に書いてあることが実感を伴ってわかった瞬間であった.このあとPCにより,同様の操作を行い,平行四辺形を様々に変化させてもこの関係性が成り立つことを確認した。また,マウス操作のコンピュータのみならず,タッチパネル式PCやグラフ電卓等でも検証した.また生徒たちにオリガミクスの芳賀氏の「芳賀第一定理」を紹介したところ、後日,なぜそうなるのかとレポートにまとめた生徒も居て,その達成感はまた次のものをやってみようとする意欲につながって行った.通常行われている単なる「黒板での授業」だけでは得られない成果が本実践により得られた.
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