Research Abstract |
【目的】バンコマイシン(vancomycin : VCM)に代表されるグリコペプチド系薬剤はMRSAを始めとするグラム陽性菌に対して選択的な抗菌活性をもつ。近年,このバンコマイシンの最小発育阻止濃度(minimum inhibitory concentration : MIC)が低値で感性を示すにも拘わらず、最小殺菌濃度(minimum bactericidaI concentration : MBC)が極めて高値を示し,殺菌に耐えて生存するグラム陽性菌が注目され,治療効果の評価において問題を提起している。今回,バンコマイシン耐容株の検出頻度を明らかにすると共に.バンコマイシン耐容株に対する抗菌薬治療のレジメをバンコマイシンと併用する複数抗菌薬との組み合わせで測定されたMBCの結果から提案することを目的とした。 【試験方法】2012年9~11月の期間に琉球大学医学部附属病院検査部に提出された各種臨床材料から分離・同定されたStaphylococcus aureus 176株,coagulase negative staphylococci(CNS)235株を対象にした。VCMについて05~32μg/mlの濃度域のMICを測定し,MBC測定はVCMのMIC測定の各濃度ウェルから10μlを採取してMH agarに接種し,48時間培養後に菌発育を認めないウェルの濃度をMBCと判定した。MBCがMICの32倍以上を示す菌株をVCM耐容株と定義した。併用薬剤試験はVCM耐容S. aureus 3株とVCM非耐容S. aureus 5株.VCM非耐容CNS 2株についてVCMとのMICとMBCでのFIC-indexを算出し併用効果判定の指標とした。 【試験結果】臨床分離S. aureus 176株中18株(10.2%)MSSA 11株,MRSA 7株、CNS 235株中29株(12.3%)にVCM耐容株を認めた。VCM耐容S, aureusは呼吸器由来株(50%)が多くを占めた。VCMに対するS. aureusのMIC90およびMBC90は1μg/mlと2μg/ml,CNSはMIC2μg/ml MBC4μg/mlであった。VCM耐容株のMIC FIC-indexではVCM+MEPMで2株,VCM+CPFXで1株が相乗効果を示した。VCM+MEPM,VCM+CPFXでは各1株,VCM+RFPでは3株すべて不関を示した。またVCM+CPFXで1株が拮抗を示した。MBC FIC-indexではVCM+RFPで3株,VCM+CPFXでは2株は拮抗を示し,VCM+MEPMの組み合わせのみ2株が相乗効果を示し,1株が不関を示した。VCM非耐容S. aureusとVCM非耐容CNSにおけるMIC FIC-indexではVCM+MEPMに3株,MBC FIC-indexでは4株が相乗効果を示した。VCM+RFPでも3株にMBC FIC-indexに相乗効果を認めた。VCM+CPFXではMICおよびMBC FIC-indexの相乗効果は認めず,MIC FIC-indexでは7株,MBC FIC-indexでは5株が拮抗を示した。 【まとめ】臨床材料から検出されるブドウ球菌の約10%にVCM耐容株が存在することが明確になった。VCM耐容株による感染症治療ではMICとMBC FIC-indexの結果からVCM+MEPMの組み合わせが期待できる。
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