| Project/Area Number |
24K00327
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| Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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| Allocation Type | Multi-year Fund |
| Section | 一般 |
| Review Section |
Basic Section 08010:Sociology-related
Basic Section 80030:Gender studies-related
Sections That Are Subject to Joint Review: Basic Section80030:Gender studies-related , Basic Section08010:Sociology-related
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| Research Institution | The University of Fukuchiyama |
Principal Investigator |
大門 大朗 福知山公立大学, 地域経営学部, 准教授 (20852164)
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| Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高原 耕平 国土技術政策総合研究所, 河川研究部, 研究官 (10844566)
宮前 良平 福山市立大学, 都市経営学部, 講師 (20849830)
松原 悠 滋賀大学, データサイエンス学系, 助教 (30840227)
中野 元太 京都大学, 防災研究所, 准教授 (90849192)
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| Project Period (FY) |
2024-04-01 – 2028-03-31
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| Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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| Budget Amount *help |
¥18,460,000 (Direct Cost: ¥14,200,000、Indirect Cost: ¥4,260,000)
Fiscal Year 2027: ¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2026: ¥5,070,000 (Direct Cost: ¥3,900,000、Indirect Cost: ¥1,170,000)
Fiscal Year 2025: ¥5,330,000 (Direct Cost: ¥4,100,000、Indirect Cost: ¥1,230,000)
Fiscal Year 2024: ¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
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| Keywords | 批判的防災論 / 防災意識 / 防災教育 / 災害伝承 / 被災者支援 / 災害検証 |
| Outline of Research at the Start |
本研究は、善意を持って進められる防災によって逆説的に生じる副作用について、今日の災害・防災研究を批判的に捉え直すことで、真に包括的な防災の理論的基盤―批判的防災論―を構想するものである。多数の事例・実践研究が報告される災害・防災研究において、災害・防災研究における用語(防災意識、防災教育、災害伝承、被災者支援、災害検証)が、防災の推進において脱文脈化・脱政治化していくプロセスと、それらを踏まえた防災実践について明らかにしようとするものである。
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| Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、防災における実践や言説が「善意」によって推進される一方で、無自覚な副作用を生じさせているという視点から、それらの副作用を批判的に検討することを目的とする。具体的には、「防災意識」「防災教育」「災害伝承」「被災者支援」「災害検証」という5つの批判軸を設定し、それぞれのキーワードの社会的な使われ方、文脈的な意味付け、制度的背景に着目し、災害・防災研究を理論的に再構成し、「批判的防災論」の構築を目指すものである。 2024年度は初年度にあたり、研究全体の基盤整備とフィールドへの準備調査を目的とし、2つの小研究を並行して実施した。小研究①では、各批判軸に対応するキーワードについて、学術論文、政策文書、新聞記事を収集・整理し、その語の使用傾向、出現頻度、語られていない論点の存在などを明らかにした。たとえば、「防災意識」は2011年の東日本大震災以降、新聞や政策文書で頻出するようになり、主に「自助」「自己責任」と結びついた形で語られる傾向が顕著である。一方で、他者への配慮や社会構造への視点が希薄化していく様子も観察された。 小研究②では、地震・津波・水害など異なるハザードを対象とし、神戸市、野田村、黒潮町、西予市、福知山市といった被災地または被災想定地域において、参与観察およびインタビューを通じたフィールド調査を実施した。調査対象は災害NPOや自主防災組織、高齢者福祉施設、語り部団体など各地域の災害対応文化や言説の差異を把握することができた。 また、令和6年能登半島地震の発災を受け、本研究の全体方針と整合的に、研究分担者が現地調査や言説分析を実施した。たとえば、ボランティア自粛をめぐるSNS分析や支援のダブルバインド構造の考察、災害伝承の語り継ぎの世代交代(中野)、草の根的記憶活動の持続性、そして災害検証の方法論的転換など、それぞれの視点から初年度にして豊かな知見が蓄積された。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度は、当初の研究計画に基づき、5つの批判軸に対応する各キーワードの社会的使用状況や現場における実践のあり方を、文献調査およびフィールド調査の両面から分析した。小研究①では、政策文書、学術論文、新聞記事(全国紙・地方紙)を対象に、「防災意識」「防災教育」「災害伝承」「被災者支援」「災害検証」といった語の出現傾向を抽出し、その背景にある政策的・社会的文脈をテキストマイニングや内容分析により整理した。その中で、たとえば「防災意識」という言葉は、被災地住民や市民への自己責任的枠組みとして頻繁に使用されており、一方で社会的弱者やマイノリティへの視点が欠落している事例も確認された。こうした言葉の使い方は、防災の「常識」とされがちな構造を再考する必要性を示唆している。 小研究②では、被災地や災害常襲地(神戸市、野田村、黒潮町、福知山市等)にて、分担研究者が参与観察やインタビューを実施した。たとえば、神戸では非体験世代による語り部活動の創出が進み、災害を「語ること」の意味が変容しつつあることが観察された。また、福知山市では社会福祉協議会や行政と連携し、災害時の福祉避難所運営や支援対象者把握の課題が浮き彫りとなった。さらに、能登半島地震の発生を受け、研究者らは計画を柔軟に展開し、現地支援活動や緊急調査を実施した。研究4では、「支援の自粛」という言説の問題点を捉え直し、福知山市の市民団体とともに、仮設住宅でのサロン活動や家屋片付け支援などを通じたアクションリサーチを実施(27回訪問)。研究5では、当初予定していた「検証」のメタ分析に代え、能登における「検証実践」に身を置くことで、その構造と限界を現場から再構成する試みが行われた。 全体として、文献とフィールドの両面から、用語の語られ方と実践との乖離や、語られにくい経験・排除の構造を可視化することに一定の成果を上げた。
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| Strategy for Future Research Activity |
2025年度は、初年度で明らかになった用語の使用傾向とフィールドでの実践的知見を踏まえ、実践研究および理論的深化に向けた展開を進める。各研究者は、当該批判軸に対応する地域・団体に継続的に関与しつつ、実践と理論の往還を意識したアクションリサーチを本格化させる。 研究1では、「防災意識」という語が日本社会においてどのような意味を付与され、どのような対象を排除・包含しているかを明らかにするため、新聞紙面やSNSのテキストマイニングを継続し、特に災害報道における文化的フレーミングの傾向を分析する。 研究2・3では、語り部活動や冊子・新聞の作成、ゲーム制作といった表現行為を担う震災非体験世代に焦点を当て、災害の「記憶」がどのように創出・再構成されているかを検討する。 研究4では、福知山市での福祉的防災活動(災害時ケアプラン、福祉避難所の運用等)に継続的に関与しながら、能登への支援活動の記録・分析を進める。支援が「自粛」される社会状況の中で、いかなる条件下で支援が正当化され、継続されうるのか、またその実践が被災地・支援者双方に与える影響を検証する。 研究5では、能登半島地震に限らず、過去の複数の災害事例(地震・水害等)において「検証」という営みがどのように実施・受容されてきたかを分析し、検証実践の課題や制度的制約を明らかにする。災害の種類を超えた「共通の問い」の抽出を試みる。 さらに、総合研究では、Tierney著『Disasters』第2版の翻訳作業を完了させ、日本と米国の防災言説・災害対応実践の比較を本格化させる。これにより、国内外の災害言説の構造的分析を通じて、「批判的防災論」の理論的骨格を具体化し、包摂的かつ持続可能な防災のビジョンを提示するための礎を築いていく。
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