| Project/Area Number |
24K03416
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| Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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| Allocation Type | Multi-year Fund |
| Section | 一般 |
| Review Section |
Basic Section 01040:History of thought-related
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| Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
飯田 賢穂 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (90806663)
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| Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
淵田 仁 城西大学, 現代政策学部, 准教授 (00770554)
中村 覚 東京大学, 史料編纂所, 助教 (80802743)
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| Project Period (FY) |
2024-04-01 – 2028-03-31
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| Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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| Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2027: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2026: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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| Keywords | ジャン=ジャック・ルソー / エルヴェシウス / 手稿研究 / デジタル・ヒューマニティーズ / TEI / デジタル批判版 / エミール / 社会契約論 / 思想史 / 文献学 |
| Outline of Research at the Start |
本研究の目的は、ジャン=ジャック・ルソーの主著『エミール』の中に結実するルソーの道徳思想の形成過程を、現存する三種類の草稿を分析することで明らかにすることである。ルソーは、論争的文脈の中で執筆し、自身の思想を形成した。この思想形成の過程が手稿の中に見出されるのである。複数の手稿を精査し、相互の異同を明確にする方法として、本研究では、『エミール』に関連する手稿のデジタル批判版を独自に作成して研究ツールとして使う。従来の思想史研究では使われてこなかったデジタル技術を導入し、ルソーの国家論の基礎ともなる道徳思想の形成過程を手稿分析によって明らかにする。
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| Outline of Annual Research Achievements |
これまで一貫して、ジャン=ジャック・ルソーの手稿を対象に、道徳思想や政治思想の形成過程を、文献学的かつ思想史的な観点から分析してきた。とくに『社会契約論』および『エミール』については、複数の草稿(F草稿、HS草稿、C草稿)を比較・検討することによって、ルソーの思想が執筆の過程においてどのように展開・変容したかを具体的に明らかにすることを目的としている。こうした分析は、従来の刊本中心の読解にとどまらず、思想が形成される動的な過程そのものに光を当てるものであり、思想史研究に新たな視座を提供するものである。 2025年2月には、「人間」と「動物」の境界をめぐる18世紀の哲学的議論を再検討する国際シンポジウムを主催した。ここでは、哲学・倫理学・動物論を横断する学際的な観点から、ルソーが『エミール』や『社会契約論』の中で追求した「人間的行為の道徳性」に関する根本的な問いを掘り下げた。さらに、日本ではほとんど研究されてこなかった18世紀の思想家エルヴェシウスの唯物論的人間論にも注目し、思想史の視野を広げる試みを行った。 現在は、TEI(Text Encoding Initiative)技術に基づく手稿分析アプリケーションの試作開発を進めている。このツールは、草稿の構造的把握や異稿間の比較、注解挿入、筆跡認識、思想生成のプロセスの可視化を可能にする機能を備えている。ルソー研究にとどまらず、他の思想家の草稿分析への応用も視野に入れており、思想史・文献学・情報学を融合させた新たな研究基盤の構築を目指している。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2024年度の研究は、大きく二点に分けて実施した。 第一に、ジャン=ジャック・ルソーの草稿群に見られる「人間的行為の道徳性」、とりわけ「義務(obligation)」という概念に関する思索を明らかにすることを目的とし、18世紀フランス哲学の専門家たちとの継続的な議論を重ねた。この議論は、ルソーと同時代の哲学者、特にエルヴェシウスやディドロといった唯物論者の思想との比較検討を含み、ルソーの道徳理論の独自性を明確にする上で重要な手がかりを得る機会となった。その成果は、2025年2月に開催された国際シンポジウムにて発表された。現在、この議論を踏まえた論文の執筆準備を進めており、2025年度内に学術誌へ投稿する予定である。 第二に、TEI技術に基づくアプリケーションを用いた手稿のデジタル転写作業を進めているが、ツール調整や仕様検討に想定以上の時間を要し、当初計画よりやや遅れている。作業対象を分量の少ない『社会契約論』の手稿に絞り、今後の手稿比較の基盤を形成するためのデータ整備を優先的に進めている。アプリケーションの運用には、TEI記述の精度だけでなく、文字認識や改行位置の忠実な再現が求められるため、研究チーム内で分担しながら試験的な転写作業を重ねている。また、注記機能や比較表示機能の統合についても検討を進めており、2025年度中には試作版の一部を研究会等で公開し、外部の専門家からのフィードバックを得る予定である。
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| Strategy for Future Research Activity |
これまで取り組んできたルソーの草稿分析の成果を踏まえ、今後の研究では、次の三つの方針を柱として推進していく。 第一に、ルソーの道徳思想がどのように形成されていったのか、その概念的模索をより詳細に明らかにする。2025年2月に開催した国際シンポジウムでの成果をもとに、論文を執筆・発表する予定である。この論文では、とくに『エミール』第2巻において展開された「義務(obligation)」の議論を中心に据え、エルヴェシウスやディドロといった18世紀の唯物論的人間論との対比を通じて、ルソーの思想の意義を思想史の中に位置づける。執筆にあたっては、シンポジウムでの議論や外部専門家のフィードバックを反映させ、査読付き国際誌での公表を目指す。 第二に、デジタル批判版の構築に向けた基盤整備を着実に進める。現在開発中のTEI技術に基づく手稿分析アプリケーションは、転写、注記、異稿間比較、筆跡認識といった複数の機能を統合した研究支援ツールとして設計されている。今後は、まず『社会契約論』草稿の転写作業を完了し、その成果をもとに比較・注釈機能の本格実装に着手する。とくにルソー独自の書き直し(挿入、削除、余白の書き込みなど)を忠実に再現するため、記述形式と表示形式の整合性を丁寧に調整する。最終的には、ユーザーが思想の生成過程を直観的に理解できるインターフェースの実現(例えばタイムシークエンスバーの設定等)を目指す。 第三に、このアプリケーションの汎用化に向けた発展的展開を図る。ルソーの草稿分析を主目的に開発を進めているが、当初より他の思想家の手稿分析にも応用可能な設計を意識している。2025年度後半には、『社会契約論』草稿に関する試作版を学内外の研究会で公開し、フランス18世紀研究やDH分野の専門家から意見を募る予定である。そのフィードバックをもとに改良を加え、2026年度中には改良版を作成する。
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