| Project/Area Number |
24K03920
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| Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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| Allocation Type | Multi-year Fund |
| Section | 一般 |
| Review Section |
Basic Section 02070:Japanese linguistics-related
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| Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
佐藤 貴裕 岐阜大学, 教育学部, 教授 (00196247)
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| Project Period (FY) |
2024-04-01 – 2027-03-31
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| Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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| Budget Amount *help |
¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2026: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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| Keywords | 辞書史 / 学際的研究 / 国語史 / 出版史 / 日本語史 / 辞書 / 言語生活 / 語彙 |
| Outline of Research at the Start |
近時、江戸時代の用字集・簡易国語辞典として機能した節用集の本文・付録を資料とする研究が人文科学諸分野で進んでいる。しかし、出版機構上の特性などへの顧慮を欠くものもあることろで、人文学全体の健全な発展のためにも、辞書史学を擁する国語学として、節用集をめぐる各種情報を広く収集・整理・発信する責務があると考えた。 そこで、まず節用集とは何物であるかを明らかにすべく、①近世節用集本文・付録などの書誌的・内容的情報の充実、②利用者の節用集認識例の収集と整理・検討、③節用集後継書を同定し対照することによる節用集の再認識、を行うととした。
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| Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画では、近世節用集に関する諸情報を収集しつつ、記述的研究での新生面を提示することに重きをおく。その一つは、停滞が指摘されて久しい付録類の検討をいかに進めるかへの提言と具体的検討を示すことである。論文「一九世紀節用集大型本付録世界図の諸問題」では、付録類の検討を試みたものとなる。大型本の嚆矢たる『都会節用百家通』では、付録類の先頭に世界図を配するなど、意欲的・効果的な利用がなされていると考えられた。が、これに続いた『倭節用集悉改嚢』『永代節用無尽蔵』などでは、そのような自覚的・意図的な利用はなく、世界図への積極的な関わりが認められなかった。翻って『都会節用百家通』の全体構成の先進性を確認することとなった。 また、これまで想定されていなかった記述的研究の視点の提示も試みた。論文「昭和戦後期における節用集認識」「節用集終焉期の諸相 : 昭和期点描・二」では、節用集が過去の遺物となった時代での節用集観を検討することで、節用集史の輪郭を確認することとした。昭和期においても、節用集を活用する例がある一方で、やはり遺物として見るものがあり、位相論的差異のあることが確認された。ただ、後者には「節用集の(再)発見」とでもいうべき、近世という時代とその産物への驚きを看取することができたことは収穫であった。 本計画の研究対象は近世節用集となるが、その母体たる古本節用集についても注意を向けるべきと考えている。論文「『下学集』言辞門成立論のための覚書」では、古本節用集の母体の一つである『下学集』の成立経緯に韻事への寄与を第一とする見解があるが、髙橋久子は、古文書類との親和性を立証している。本論文では、やはり韻事への関与は捨てきれないこととともに、髙橋の主張を裏打ちするために五山禅林の社会的位置を日本史分野の成果を援用・提示し、偏りのない検討の必要性を再確認した。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究計画の初年度にあたる令和6年度においては、これまで等閑視されてきた付録類の検討への試論的研究を企図したが、論文「一九世紀節用集大型本付録世界図の諸問題」によって一応の成果を提示したと考えている。これは、近世節用集が世界図を所掲することの意味・効能について、地図史学での成果を参照・応用しつつ考察したものであり、検討の過程では地図史学側の見解を修正することも行ない得ており、学際的研究のありようを示すことができたと考えている。一方、新たな記述的研究のありようとして、すでに節用集が刊行されなくなった時代における節用集観を検討するとの観点を準備し、昭和期(後期)を中心とした検討の可能性について、論文「昭和戦後期における節用集認識」「節用集終焉期の諸相 : 昭和期点描・二」により具体的に示すことができたと考えている。 さらに、近世節用集の記述的研究では、その始源となる古本節用集の成立への注意も欠かせないところで、本研究計画でも一定程度、中世資料の収集と隣接分野の成果・知見についても注視してきたところである。論文「『下学集』言辞門成立論のための覚書」ではその成果を遺憾なく利用しえたと考えており、ことに『下学集』を生み出した室町時代前半の五山禅林において、学芸担当の西班衆では辞書類製作が旺盛であり、庶務担当の東班衆では世俗への関わりが密接であり、文学活動を経由して貴族文化への関与などが見られるが、これらに注視する必要性を再確認した。 原本の収集では、17世紀諸本につき、『節用集』寛永12年本下巻・『真草二行節用集』寛永15年版上巻・慶安4年本下巻・寛文5年本などを得て比較・検討の幅を拡大することができた。『万倍節用字便』は元禄5年刊本を入手したが、これは他に所蔵を聞かないものである(享保以降の刊本は既知)。 以上を総じてみると、本研究計画は、順調に進捗していると判断された。
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| Strategy for Future Research Activity |
今年度公開した論文4点により、以下のような検討への見通しを得ることができたと考えている。 まず、付録類への検討の見通しを立てることができたと考えている。近世節用集の付録類は、ときに「百科事典的」とも評されるように広い分野にわたるものとなっている。これを検討するためには、隣接諸学の成果を参照・摂取するのはもちろんのこと、国語学・日本語学とは距離のある分野の成果の参照・摂取とともに、学際的交流を視野にいれて検討を推進することになる。この点、世界図については一定以上の検討ができたことを考えるとき、地図史学の成果の、より一層の成果を参照・摂取を見込むところである。また、論文「昭和戦後期における節用集認識」に採り上げた思想史・演劇史・食物史関係の論考については批判的な検討をくわえることもあったが、見るべき点もあるのであって、その方面での検証を行なうことが残された課題としてあるものと認識している。 また、昭和初期に節用集の刊行は完全に途絶するが、そのような事態にいたったことについては、近代的国語辞書の普及があるものと一応は解釈することができる。が、これも、昭和初期から遠く離れた令和の時点から見てのことであり、その意味では限界のある解釈である。そこで、昭和初期という時代の視点から、いかに節用集が終焉を迎えることになったかを可能なかぎり直接的に、あるいは語弊を恐れずにいえば近視眼的に観察する手法を編み出したいと考えている。たとえば同時代を生きた人々の辞書観・書籍観を参照するための準備にかかりたいと思う。これについては、国立国会図書館デジタルコレクションのような至便なツールもあることであり、労を惜しまなければ一定の進展が見込めるのであって、一定の成果をあげることができるものと思われる。
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