| Project/Area Number |
24K21003
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| Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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| Allocation Type | Multi-year Fund |
| Review Section |
Basic Section 80010:Area studies-related
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| Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
西 直美 同志社大学, 研究開発推進機構, 嘱託研究員 (50822889)
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| Project Period (FY) |
2024-04-01 – 2027-03-31
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| Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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| Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2026: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2024: ¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
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| Keywords | トランスナショナリズム / タイ深南部 / マレーシア / 移住者 / 市民組織 / 移民 / 市民権 / トランスナショナル政治 / 市民社会組織 |
| Outline of Research at the Start |
マレーシア国内には、マレーシア市民権をもつタイ深南部地域出身のマレー・ムスリムが多数存在し、タイで続く分離独立運動に直接的・間接的に関与してきたといわれる。マレーシアに存在するタイ料理店のネットワークは、移民の相互扶助や生活環境の改善を目指して、ボトムアップ的に出現した組織であるものの、タイ政府に疑念の目で見られてきた。本研究では、マレーシアにおける市民組織の実態調査を通して、越境的な活動を展開するムスリム市民社会組織が、タイ深南部における政治運動やタイ・マレーシア関係に与えた影響を検討したい。
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| Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、タイとマレーシアにまたがる市民社会の実態について、タイ深南部での短期調査を行い、現地識者のコメントやアドバイスを得た。また文献調査および現地調査を通して明らかになった点について発表を行い、移民や越境に関する研究を実施してきた専門家のコメントを得ることができた。 タイ政府は、深南部で紛争が再燃した2004年以降、歴史的に深南部ともつながりの深いマレーシアの国内にあるタイ料理店、通称トムヤム店がテロの温床であると疑うようになった。他方でタイ政府は労働者の送金がもたらす相当規模の経済的利益を前に締め付けに向かうことは避け、マレーシア国内でのタイ人労働者の保護という形で関与しようとしてきた。マレーシア国内のタイ深南部出身者について、労働者のインフォーマルなネットワークに関する人類学的な調査や、移住の背景についての社会学的調査がある。ただ深南部紛争を扱った膨大な研究があることを考慮すると、移動する人々の観点からタイ・マレーシア双方を視野に入れて深南部問題を考察する視点が十分だったとはいえない。 現時点で明らかになったのは、「マレーシア・トムヤム協会」がインフォーマルなネットワークではなく市民組織として実在すること、政治・宗教的な価値をめぐって「ウフゥワ」「サハバ」など分裂が進んだことである。当該組織は、タイ深南部にルーツをもつマレーシア市民を中心に構成され、一部はNGOとして登録されていた。メンバーは故郷と行き来しつつ、経営者・労働者の相互扶助や、地位向上を目指したマレーシア政府に対する働きかけも行ってきた。それぞれの組織の設立経緯や全体像の解明には程遠い状況であるが、トムヤム協会に関わる人々へのインタビューからは、パタニ(深南部)マレーであるという属性が、彼らの自己認識と活動において重要な意味を持っていることが明らかであった。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の申請時に協力の承諾を得ていたアシスタント(マレーシア)の調査への同行が困難になったこと、および申請者自身の体調不良により現地調査が想定より進まなかったことが主たる理由である。一方で文献調査においては、ナショナリズム研究、移民研究、市民権の問題を中心に、分析枠組みを強化することができた。
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| Strategy for Future Research Activity |
マレーシア国内で暮らす深南部出身者や深南部にルーツがある人々について、とりわけ深南部で紛争が再燃した後、分離独立派組織を支援しているといったような根拠が不明確な噂レベルの話が横行してきた状況がある。本研究は、深南部問題を市民社会のレベルに根差しつつ、国家に対して外部のダイナミズムを接続する「トランスナショナル政治」の観点から捉えることを目指し、その足掛かりとしてトムヤム協会に着目するものである。 市民組織の実態やその役割の考察に向けて、引き続き1)タイとマレーシアにまたがる市民組織にはどのようなものがあり、どのような経緯で興隆し、どのような活動を行っているのか、2)タイやマレーシアの政党・政治家に資金や票の提供を行っているのか、政府関係者の誰に対して何をどのように働きかけてきたのか、3)深南部におけるその他の社会運動やタブリーグなどの宗教運動との関わりはあるのか、といった点について調査を行っていきたい。 2025年4月以降、深南部では一般市民や宗教者が暴力の標的になることが増え、2004年と比較されるほどに情勢が悪化している。それにともない、すでに信頼関係の構築ができている調査対象者ではない相手へのインタビューでは、調整の段階で困難を感じる場面もでてきた。状況に応じて、アプローチの仕方を変えることを視野に入れ、慎重に進めていく。 深南部問題を、国家権力の働き(ナショナル)や主権国家間関係の力学(インターナショナル)に加え、トランスナショナルな視点から考察するという目的に加え、本研究開始時に設定した課題の一つが「地域の一体性とは何か」という問いに取り組むということであった。マレー世界の一部であるパタニ(深南部)が、その他のマレー世界との交流のなかでどのように地域としての自己認識を培ってきたかという点についても考察をしていきたい。
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