Research Project
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
本研究はフランスの哲学者ジャック・デリダの「憑在論」に着目し、これを彼の著作全体を束ねる一貫した「メディウム」(=媒介・霊媒)の問いとの関係から再考察することで、デリダ思想が有する存在論的なメディア論としての射程を明らかにするものである。従来、憑在論は後期思想の鍵概念として、とりわけ80年代以降の正義論に関わる政治的側面や、「メシアなきメシアニズム」等の思想が含意する宗教的側面が強調されてきた。しかし本研究では、憑在論を単に狭義の政治思想や倫理の問題にのみ関わるものではなく、むしろ初期の書字や音声に関する現象学的・存在論的な分析から続く、デリダ独自の〈メディア存在論〉であることを明らかにする。