Research Project
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
本研究は、オーストリアの作家ヘルマン・ブロッホの芸術理論における「倫理」概念について、特に彼の1930年代の理論的著作を、初期の美学草稿との連続性という観点から検討する。30年代のブロッホは芸術活動を「倫理的価値の実践=形成」という枠組みの中で捉えようとし、ジョイスの前衛的な小説作品もこの文脈で論じている。こうした視点はしかし、世紀末ウィーンの哲学者オットー・ヴァイニンガーの影響を受けた10年代の美学的著作にも萌芽的にみられるものである。本研究では、「芸術と倫理」というテーマのもと、ジョイスとヴァイニンガー、あるいはブロッホの文学的モダニズムと世紀転換期のモデルネ文化の接続を試みたい。