Research Project
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
多くの「国民的物語」は歴史的な植民地支配とそこからの解放、その過程における戦争をはじめとした暴力、およびその過程の正当化の物語であるが、そうした物語は現代においては国境を越えて相互に流通し、相対化される状況で読まれることが常態となっている。本研究では、そのような基本的前提のもとに、民主化を経た1990年代以降のインドネシアを対象に、ジェンダー/セクシュアリティ、加害/被害、ヨーロッパ/アジア、階級などの多声性の点から小説を検討し、その検討を通じて国民国家論的な前提がインドネシアの小説においてどのように乗り越えられようとしているかを明らかにする。