Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
本研究は、17-18世紀のオスマン朝によるエジプト支配を、社会史研究の視座から再考する。その際に着目するのは、これまで十分に光の当てられてこなかった、(1)軍人・支配層の生活環境や日常的職務、(2)彼らの政治・社会観である。(1)については、軍人・支配層の生活の場としてのカイロ城塞とその周辺の街区に焦点を当てる。(2)については、エリート学者の構想した政治思想と、実際の軍人が抱いていた見方の双方を取り上げる。こうした試みは、社会や文化に重点を置く軍事史研究や人びとのコミュニケーションの作用に注目する支配権力研究といった、近年の歴史学の展開に、近世エジプト史の立場から呼応しようとするものである。