Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
細胞膜を構成する脂質には糖鎖が付加しており、腫瘍で著明に変化するので、腫瘍マーカーになり得る一方で、病態の分子基盤になる。我々は糖鎖合成系酵素遺伝子ノックアウト(KO)マウスを用いて、腫瘍関連糖鎖に対するモノクローナル抗体 (mAb) の効率的な作製を試み、バーキットリンパ腫特殊抗体の樹立と効果に関する報告を行った。この成果を踏まえ、腫瘍の脳転移のメカニズム解明に発展させるべく、抗転移関連糖鎖抗体の作製と糖鎖機能の解析を目指した。糖脂質GD1αは正常組織では中枢神経系に微量発現している。一方、腫瘍においては高転移性腫瘍に発現して血管内皮細胞との接着に寄与すること、GD1α合成酵素遺伝子の発現が乳癌の脳転移と強く関連することが報告された。そこで本研究計画では GD1αを欠損する遺伝子KOマウスにGD1αを免疫することでGD1αに対する特異的なmAb を作製し、GD1αの腫瘍細胞、特に転移における役割を明らかにすることを目指した。まず、GD1αを脳内に蓄積するGM3 合成酵素KOマウス脳からGD1αを精製した。次にGD1αを合成できないGM2/GD2 合成酵素KOマウスにリポソームに包埋したGD1αを免疫することで、GD1α特異的なmAbを産生するハイブリドーマ k122 (IgM) を単離した。薄層クロマトグラフィーimmunostaining 及びELISA により、k122 はGD1αに特異的に結合することを確認した。更に、GD1α前駆体であるGM1bの発現細胞に、GD1α合成酵素遺伝子を発現させることで、k122 の結合の増強が認められた。また力価抗体を含む腹水も作製した。これらの結果から、糖脂質に対するmAbの作製には糖鎖合成系酵素KO マウスが有益であることが明らかになった。今後これらの抗体を用いて、転移におけるGD1αの関与の解析を進める。
All 2013
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