Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
平成25年度の研究実績・下部食道への胃酸、胆汁酸混合逆流モデル(ラット)の作成胃幽門輪から約5mm遠位の十二指腸を切断し、胃に付帯した近位断端をTreitz靭帯から遠位約4cmの空腸に端側吻合した後、同吻合部位よりさらに5mm遠位に食道を端側吻合するモデルで、下部食道へ酸性の胃十二指腸混合物の逆流がおこり、術後20週で約78%にバレット食道、約50%に食道腺癌・が発生することが報告されている。7週齢Wistarラットを用いて本モデルを16匹作成した。術後、0.05%亜硝酸塩(飲水)、1.0%アスコルビン酸(食餌)を投与するNO群(8匹)と、いずれの薬剤も投与しないControl群(8匹)とに振り分け、術後24週後にラットの全食道を摘出し、食道腺癌の発生率をNO群、Control群とで病理組織学的に比較検討した。その結果、バレット食道発生率はNO群で50(4/8)%、Control群で75(6/8)%であり、食道腺癌発生率はNO群37.5(3/8)%、Control群25(2/8)%であった。当初の予想に反しNO群でのバレット食道、腺癌の有意な発生促進は確認されず、バレット食道発生率に関してはむしろCntrol群のほうが発生率が高い傾向であった。また、NO暴露によりNrf2の発現が増強される可能性を考え、ラット手術検体に対するNrf2の免疫染色を行ったが、NO群とControl群との間にNrf2の発現の明らかな相違は認められなかった。原因としてNO暴露により強く傷害をうけた上皮が脱落することでNO暴露の影響が不明瞭化した可能性を考えた。その後、再度本モデルを18匹作成し、術後NO群にて投与する亜硝酸塩の濃度を0.025%へと減じた上で、再度NO群(9匹))とControl群(9匹)に振り分け経過観察を開始している。