Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
自然免疫、炎症、細胞外マトリックス蓄積、血管新生因子Fibroblast growth factor-2 (FGF2)抑制等の機能をもつPentraxin 3(PTX3)の全身性強皮症の病態における意義を追究することを目的とした。強皮症患者175例と健常人19例の血漿PTX3濃度および血清FGF2濃度を測定したところ、共に強皮症患者の方が有意に上昇していた。さらに、各臓器病変(手指潰瘍(DU)、上部・下部消化管病変、間質性肺疾患、肺動脈性肺高血圧症(PAH)、心筋病変)の有無と、PTX3・FGF2濃度の関連を調べたところ、DU患者ではPTX3・FGF2濃度が有意に上昇しており、PAH患者では、FGF2濃度が有意に低下していた。次に、2年前後のペア検体のある37例を対象に、2年間にDUを発症した9例と、未発症28例に分け、PTX3・FGF2濃度の変化を測定したところ、FGF2濃度はDU発症例でのみ、有意に上昇しており、代償的上昇と考えられた。一方、PTX3濃度はDUの有無に関わらず経過中に有意な変化を認めなかった。そこで、DU未発症158例を対象に、2群に層別化し、将来のDU発症の累積発生率を比較したところ、PTX3≧4.3ng/ml群は<4.3群と比較して有意に高かった。次に、66例を対象に、末梢血中の血管内皮前駆細胞(EPC)(CD34+CD133+CD309+)数とPTX3濃度の関連を検討したところ、反比例の関係にあった。さらに、C57BL/6マウスの骨髄細胞を用いたEPCコロニー形成アッセイにて、recombinant PTX3を0、5、20nMの3群で添加したところ(各群n = 4)、用量依存性にコロニー数が低下し、PTX3による骨髄中のEPC成熟抑制効果が示された。以上から、PTX3への高濃度暴露が脈管形成抑制を介して末梢循環障害発症に寄与していると考えられた。