Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
デングウイルス(DENV)は蚊によって媒介され、デング熱・デング出血熱を引き起こす。分布域は100ヵ国以上と広大で、推定患者数は年間数億人に上る。世界中でワクチン開発が試みられているが、未だに認可ワクチンはない。ワクチン開発を困難にしている要因として、DENVの抗原多様性と、それによって引き起こされる抗体依存性感染増強(ADE)がある。ADEは、DENVに感受性のある単球やマクロファージ等に発現するFcγレセプターを介して、抗体がウイルス感染を増強させる現象で、重症化との関連が示唆されている。DENVには4つの血清型(1‐4型)が存在し、初回感染とは異なる型に感染した場合、中和活性を有さない交差性の抗体や、中和活性を有する抗体であっても低濃度ではADEを示すことが知られている。マヒドン大学とサノフィパスツール社が行った、黄熱ウイルスとの弱毒キメラワクチン(CYD-TDV)の臨床試験では、全血清型の実験室株に対して中和抗体の誘導が認められたが、2型ウイルス感染による発症率がワクチン接種群と非接種群でほぼ同等であることが報告された。このように、中和試験結果と臨床現場での結果が大きく異なる原因として、評価用抗原として用いられる実験室株やワクチン株と、現在タイ国内で蔓延している流行株では抗原性に大きな違いがあることが推測された。本研究では、先ずCYD-TDVの臨床試験を主動したアルニー教授と共同で、近年のタイにおける流行株の遺伝子解析を行なった。実験室株およびワクチン株との相違について検討した結果、近年流行している2型ウイルスには、ウイルスの表面構造に影響し得るアミノ酸変異が生じていることが明らかとなった。CYD-TDVの臨床試験において、2型ウイルスに対してのみ、極めてワクチン効果が低かった理由の一つとして、この構造変化が関与している可能性が示された。
All 2014 2013
All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (3 results)
Microbiology and Immunology
Volume: 58 (2) Issue: 2 Pages: 126-134
10.1111/1348-0421.12125