Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
嗄声の重症度の客観的評価法として音響分析があるが、近年その信頼性が疑問視されており、特に軽度音声障害の検出が困難とされる。これまで申請者らは、従来の音響分析(周期および振幅の不整指数など)よりもelectroglottography(以下EGG)波形の不整指数の方が高い信頼性を示すことを報告してきた。しかしながら、EGG信号の波形の乱れが生体のどのような事象に起因するのかは明らかになっていない。当研究では病的声帯振動動態と発声時の頸部筋緊張に着目し、喉頭高速度撮影および頸部表面筋電図所見がEGG波形の不整指数に及ぼす影響について検討して、EGG波形の分析パラメータの有用性に関する理論的背景を構築することを目的として開始された。まず、喉頭高速度撮影とEGG波形の同時記録システムの構築に着手した。同時記録システムには波形同時記録装置が別途必要となり、その装置の設定を適正化させた。その後、申請者および同グループの研究者を対象として喉頭高速度撮影・EGG波形の同時記録における予備実験を施行した。その結果、喉頭高速度撮影における声門閉鎖期・開放期とEGG波形における声門閉鎖期・開放期はほぼ正確に一致しており、喉頭高速度撮影およびEGG波形の同時記録が正確に行われていることが確認された。その傍ら、頸部表面筋電図とEGG波形の関連性について調査するために、まず申請者および同グループの研究者を対象として発声時に頸部過緊張が生じるようなタスクを行った際の頸部表面筋電図とEGG波形を同時記録した。頸部過緊張を生じさせた際に、表面筋電図の振幅が上昇すると同時にEGG波形の周期および振幅の不整指数が上昇することが確認された。以上の実験から、喉頭高速度撮影とEGG波形の同時記録および頸部表面筋電図とEGG波形の同時記録システムが適正に構築された。