Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
高い再生力を持った組織は豊富な血流と十分な数の組織局在性の幹細胞が特徴である。組織局在性幹細胞は再生中の組織に必要な細胞を迅速大量に供給することが可能である。このような組織局在性幹細胞が豊富で良好な治癒機転にある組織では、外来性の幹細胞補充の必要性は殆どない。しかし、形成外科領域では、重度の障害を受け血流・組織局在性幹細胞とも乏しい組織の治療の必要性に直面する。しかし、重度に治癒力が低下した皮膚軟部組織にに移植する幹細胞として何が適しているのか、移植された幹細胞が何になるのか、幹細胞が創傷治癒力を発揮する機序が何であるか、は明らかではなく、治療効果も不明である。本研究の目的は、形成外科領域の再生力低下組織に移植された、各種幹細胞の生着と分化および組織再構築能の違いを比較することである。従来のアプローチでは根本的な改善は困難である。再生力の低下した乏幹細胞状態部位や、元来幹細胞が存在せず再生力のない部位に対する幹細胞補充療法については、世界中で様々な研究が行われている。しかし、マウスは創傷治癒力や細菌感染に対する抵抗性が極めて高く、難治性創傷モデルや感染モデルが作成しづらいことが知られている。そこで、我々はマウス頭蓋骨に一定以上の組織欠損を生じさせたモデルを作成し、マイクロCTおよび組織学的検討を行ったところ、24週時点でも自然治癒は生じず難治性創傷モデルとして使用しうることを明らかにした。同モデルマウスを用いて、創傷に対する幹細胞移植として、シアニン系近赤外蛍光色素で染色したマウス自家脂肪組織由来間葉系幹細胞をフィブリン糊を足場として移植し、生体イメージング法による観察を行った結果、移植細胞が未だ不安定である移植初期において移植細胞が安定して移植部位に留まることが確認された。今後、幹細胞移植によって創傷治癒を促進することができる具体的条件を明らかにしたい。