Research Project
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
プロトン(H+)は電子移動とカップルするため、その局在濃度は人工光合成や燃料電池の触媒効率に直接作用する。本研究の目的は、極限環境微生物に見られる細胞外H+濃度に逆相関して細胞膜上により多くH+を集積する機構の解明である。極限菌の一種である好アルカリ菌は、細胞内部に較べて膜外のpHがより高い条件において、膜上タンパク質に電子を貯め込むことでH+を局在化させ、ATPを合成すると提案されている。しかし、呼吸鎖における電荷の局在性を確かめるには、律速電子移動過程の特定が不可欠となるが、既存の単独・単離タンパク系での検討は極めて難しい。本研究では、電流生成菌を生きたまま電気化学システムに適用する「微生物電気化学」を用いて、申請者が発見した初となる好アルカリ電流生成菌と電極の界面電子移動と細胞内ATP濃度をin-vivo同時追跡することで、高アルカリ条件に逆相関するH+局在機構に迫ることを目指す。本年度は、(1)好アルカリ電流生成菌の連続希釈法による単離、(2)ゲノム塩基配列の決定、解析を行うことを研究計画として掲げていたが、申請者が米国研究機関で集積した微生物が全く増殖しなくなり再び菌体の採取から行うこととなった。そこで、再現性を確認する意味も込めてサンフランシスコ山中のpH12の極限環境に再び電極を設置し、採集したサンプルを米国実験室で電極培養すると以前観測されたように微生物の代謝に由来する電流値の増加が確認された。電極を日本に輸送し、立ち上げた嫌気ボックス内で電極培養実験を行なうと、最初は輸送中の酸素混入によるダメージからから電流値がほとんど観測されなかったが、徐々に電流値の上昇が観測された。現在、単離に向けて微生物を集積中である。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。