Research Project
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
加齢などによって見られる組織の機能低下や枯渇の原因を探るため、ほ乳類の白毛化(白髪)に着目し、『色素幹細胞の自己複製制御の仕組みとその破綻のメカニズムを解明』することを目的とした。本研究で3つの遺伝子が色素幹細胞の維持に重要な役割を持つことが明らかになった。1つ目は酸化ストレス耐性に重要な遺伝子であるNrf2であり、その欠損によって色素幹細胞が枯渇しやすくなることがわかった。このことは酸化ストレスが幹細胞維持に関わっていることを示唆するものであり、今後は酸化ストレスがDNAダメージを介して幹細胞の枯渇を引き起こすのか、もしくは別の経路を介して引き起こすのかについて明らかにしていく必要がある。2つ目の遺伝子として、様々な生物で寿命との関わりが証明されてきたSirt1について、その欠損により色素幹細胞が枯渇しやすくなることもわかった。Sirt1は様々な遺伝子に影響を与えることから、メカニズムについてはまだ未知の部分も多いが、DNA修復への関与が明らかになりつつある。最後に、DNA修復応答について中心的な役割を担うATR遺伝子について、その色素幹細胞特異的な欠損は、生まれた時からの色素幹細胞の枯渇を起こす結果となった。このことは、発生においてATR遺伝子が色素幹細胞の維持に必須であることを示している。次に、タモキシフェンを投与することによってCreを発現し遺伝子を欠損させることのできるCreERマウスを使って、生育後に色素幹細胞特異的にATRを欠損させたマウスについて調べたが、こちらは野生型マウスと比較して優位な差が見られなかった。このことはATR遺伝子が修復に関わるDNA損傷(一本鎖切断など)は単独では色素幹細胞の枯渇を引き起こさないことを示唆するものであるが、今後はどのDNA損傷が重要なのかを明らかにしていく必要がある。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。