Research Abstract |
●研究目的小学校における通常の算数授業で、相互教授法を取り入れたグループ学習を実践し、その学習効果を質問紙調査・学力調査・グループの発話調査をもとに、分析・考察することを目的とする。また学習効果を他者に対する援助や協力への目標志向である向社会的目標(中谷・出口, 2003)との交互作用との関連から検討する。 ●研究方法 1群事例プレポスト(中断時系列)デザインにより以下の方法で行う。 (1)質問紙調査 : 児童のグループ学習に対する肯定的認知を、「グループ学習満足感尺度」(町・中谷, 2012a)にて測定する。また児童の向社会的目標を、中谷・出口(2003)の元尺度をもとに測定。プレテスト時の合計得点の中央値で児童を高低群に分割し、交互作用を検討する枠組みとする。 (2)学力調査 : 児童の算数学力調査を、指導書の添付資料や授業毎の学習定着度テストにて測定する。 (3)グループ発話調査 : 各グループにおける発話を、グループ毎に設置したビデオカメラ・集音マイクを使って記録する。トランスクリプトにまとめた発話記録を、カテゴリー分析表(町・中谷, 2012c)を用いて分類するとともに、各グループの発話の文脈を、事例解釈的分析を用いて解釈する。 ●研究成果 小学校5年生の算数グループ学習における相互教授法(Palincsar & Brown, 1984)の介入効果を, 学習課題達成度(分析1)・グループ学習への肯定的認知(分析2)・発話プロセス(分析3)により検討した。相互教授法による教示を行った介入群と, 自由に話し合いをさせた対照群を比較したところ, 介入群では学習に関連する深い発話が多く非学習関連発話が少ないことや, 学習課題の達成度が高く, グループ学習への関与・理解に対する認知が向上するといった, 相互教授法の介入効果が示された。次に児童を向社会的目標の高・低によりH群・L群に分割し, 児童の個人的特性と相互教授法介入との交互作用効果について検討した。その結果, グループ学習開始前には低かったL群児童のグループ学習への関与・理解に対する認知が, 介入群において向上した。また発話プロセスの分析からは, 相互教授法による話し合いの構造化によって, 向社会的目標L群児童では, 非学習関連発話が抑制されることで, グループ学習への関与が促されるという結果が見られた。またH群児童においても, 学習に関連する深い発話が促されるなど, より能動的な関与を促進する可能性が示された。
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