Research Abstract |
東日本大震災そして原発事故による大災害への対応を考え続けている我が国は, 2012年6月に開催された「国連持続可能な開化会議(リオ+20)」において, 環境未来都市の世界への普及, 世界のグリーン経済移行への貢献, 強靭な社会づくりを柱にした「緑の未来」イニシアティブを発表した。ESDは我が国の教育の重要な理念の一つとして教育振興基本計画に位置づけられ, DESDの最終年となる2014年の後も, 先人の教えに学びながら人と自然との共生を考え, 未来社会を考える取り組みを実践していくことが重要であると考える。そこで本研究では, 私がここ数年研究対象にしてきた奇跡的な力を持つ「ソバ」に加え, 日本書紀に天皇に献上されたことが記され古代ギリシャ・ローマ時代から神様の贈り物と呼ばれてきた自然の恵み「キノコ」を切り口に, 家庭科からESDへのアプローチを科学の視点を加えて試みた。 具体的には, 国土の7割が山林であるスロベニアでキノコやソバの取材を行い, 第12回国際ソバシンポジウムに参加し資料を収集して授業で活用するとともに, ゲストティーチャーを招いてキノコについての生物学的, 調理科学的な内容について講義をしていただいた。また, 生徒は菌床でのえのきだけ, しいたけなど5種類のキノコ栽培を行うことを通して自然循環を知り, 収穫後は家庭に持ち帰り調理を行うことで, 循環資源に関して家族や友だちとの意見交流ができた。さらには, 本校公開授業で, 江戸時代, 現代ヨーロッパおよび日本の料理におけるキノコやソバを使用した味付けなどを再現し, 未来に残したいメニューを作成させ, 健康で真に豊かな食生活を送るためには何が大切かを考えさせた。自然の恵みを通して食を多角的に考える本研究により, 環境問題を体系的に捉え未来への指針の礎が築くことができた。
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