本研究の目的は、中学生の科学的思考力の育成に必要な、理科教師の実践的力量を身にっけるための模擬授業に関する研修を開発し、その効果について実践的に検討することであった。 まず、中学生のメタ認知活性化を、科学的思考力の育成のための媒介変数として位置づけた。次に、理科教師自身にメタ認知の活性化の違いについて実感させるために、中学生のメタ認知を活性化する模擬授業(以下「課題解決型模擬授業」とする)と、メタ認知が十分に活性化されない模擬授業(以下「演繹検証型模擬授業」とする)を開発した。具体的に、課題解決型模擬授業と演繹検証型模擬授業の内容は、ともに「化学反応式と量的関係」を対象にした。そして、課題解決型模擬授業では、学習した科学的原理・法則に関する知識や観察、実験で獲得した技能を活用して課題を解決する内容とした。一方、演繹検証型模擬授業では、学習した科学的原理・法則に関する知識を、観察、実験によって演繹的に検証する内容とした。本研修は、A県教育センターが主催する「中学校理科観察・実験基礎講座」において、A県内の中学校理科教師116名を対象に、演繹検証型模擬授業、課題解決型模擬授業の順に連続して行った。 本研修後のアンケート結果から、「思考の振り返りや見通しを活性化するような授業を組み立てていくと知識の理解が深まり、定着が高まることが分かった。」、「今まで学んできた知識を活用して思考力・表現力を高める授業イメージをもつことができた。」といった、本研修に対するポジティブな感想が得られた。
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