Research Abstract |
本研究は, 小学校高学年と中学校の理科学習がスムーズにつながる学習内容と方法を明らかにすることを目的として行った。まず, 小・中学校の理科授業の現状を把握するために, 公立小学校4年生102名, 6年生113名, 公立中学校2年生217名を対象にアンケート調査を行った。その結果, 小学生・中学生ともに, 日頃受けている理科の授業は, 教師が準備した観察・実験や少人数の話し合い, 教師の説明を中心にしながら問題を解決する授業であると認識していることが明らかになった。さらに, 観察・実験結果から結論を導く指導が十分な成果を上げていないことも示唆された。小学生・中学生ともに「わかる」授業を求めているが, 小学生は学習内容を理解するための援助のみならず, 新しい知識を得て自らの世界を広げていこうとする欲求がある。理科授業への要望は, 小学生・中学生ともに, 実験を増やすことであり, 学年が上がるにしたがって「とにかく実験がしたい」との要望が増加することも明らかになった。以上の調査結果を基に, 中学校での原子, 分子, イオンの学習にスムーズに接続する小学校6年「水溶液」の学習内容と方法を検討し, 検証授業を実施した。検証授業は, 塩酸と鉄の反応の学習場面において, 教科書に準拠した指導に, 塩化鉄が生成する様子を自作アニメーションで示しながら教師の解説を加えたものである。授業後に70名を対象にアンケート調査を行った。その結果, アニメーションと教師の説明に対しては64%が「おもしろい」と評価した。授業の難しさについては24%が「難しい」と感じていた。学習内容の理解に関しては92%が「理解できた」と回答した。学習内容を他の人に説明できるかとの問いには45%が説明できると回答した。理科の授業における教師の解説については82%が「あってほしい」と回答した。また, その主な理由は「わかりやすくて面白い」「今まで知らなかったことを知ることができるのは楽しい」「質問ができる」であった。今回の調査結果から, 中学校へ学びをつなぐ小学校高学年理科の方法として教師の説明を中心とした授業を行うことの有効性が示された。また小学校6年生が粒子の結合を理解できる可能性も示唆された。
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