Research Abstract |
○研究目的 : 化学ならびに材料科学分野において結晶構造や分子構造により特性が大きく変化することから、物質の原子レベルでの立体的な構造を理解することは非常に重要である。しかし、初学者にとって複雑な構造を紙面の二次元的な情報だけで理解することは非常に困難である場合が多い。ここで物質の構造を正確に表現した模型を利用すれば、容易に構造の理解を促すことができ、研究者レベルにおいても構造に起因する現象を考察する場合には非常に有効である。基本的な構造の模型キットは市販されているが、一概に高価でありまた複雑な構造や歪んだ結晶構造には対応できないことが多く、応用展開は不向きある。そこで、無垢の球体を用いて多種多様な模型を作製できるよう球体穿孔装置を開発し、様々な結晶構造模型を作製することを目的としている。 ○研究方法 : 球体穿孔装置の構成として、球体を固定するためのチャックと角度調整のための回転軸機構を製作し、これを市販の卓上ボール盤に付属させた。模型用材料として、原子を表現する球体には色付きのアクリル球(Sφ12,20)を採用し、結合を表現する連結棒にはスチロール樹脂製の丸棒(φ2, φ3)を用いた。結晶構造描写ソフトを使用して結合角などを算出し、ダイヤモンドやリモネンなど、様々な模型を作製した。 ○研究成果 : 本装置を用いることで自由度の高い模型の作製が可能である。単位格子を拡張させたダイヤモンドの結晶構造模型では単位格子部分のみ球体の色を変化させ、また光学異性体のリモネンでは不斉炭素部分の球体の色をL体およびD体でそれぞれ変化させた模型を作製した。これにより、視覚的に容易に構造を理解把握できる。またユーザー自身で模型を作製する場合、まず構造を調べて必要な加工の手順を考え、そして加工し模型を組み立て観察する、この工程を経験することで、より構造の理解を深められることが期待できる。
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