本研究では、スマートフォンの機能を活用した、外部に接続するセンサのためのインターフェースICの作成を目指した。このようなICを簡易型センサコンディショナICと呼び、ここでは、増幅器、フィルタ、その他の回路を1つのICで実現するものをさす。今回、センシング対象を表面筋電位信号とし、簡易型センサコシディショナICの初段で用いられ、かつその中でも特に重要な超低ノイズアンプの設計と試作に取り組むことを目的とした。 はじめに、センサから信号を取り込む際に多く用いられている計装アンプの設計を行った。まずオペアンプ単体の設計を行い、そのオペアンプを用いて計装アンプを設計した。表面筋電位信号は、非常に微弱で低周波な信号であるため、通常のアンプで増幅すると、低周波域においてIC内部で発生する雑音で信号が埋もれてしまう。そこで、これらの雑音を低減させるため、チョッパースタビライゼーション技術を付加した計装アンプを設計した。IC内部で発生するノイズを意図的に加えて回路シミュレーションを行い、通常の計装アンプとノイズ対策を付加した計装アンプの出力のFFT解析結果をみると、表面筋電位信号の低周波数領域において、ノイズが低減できていることが確認できた。 次に、CMOS 0.6umプロセスを用いてマスクレイアウトを行い、ICの試作を行った。試作したICを使い評価を行ったところ、計装アンプとしての動作は確認できたが、シミュレーション結果以上のオフセット電圧が出力に発生したため、利得を持たせた評価を行うことが出来なかった。IC内に計装アンプを構成する回路ブロックを個別に組み込んでいたため、個別の回路ブロックの測定を行ったところ、計装アンプの出力に用いたオペアンプでオフセット電圧が発生していることがわかった。今後の課題として、出力段に用いるオペアンプの回路構成を検討することがあげられる。
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