Research Abstract |
「紅の夢」は藤崎農場で品種登録した果肉まで赤く着色するリンゴ新品種である. しかし, 果皮に斑点状の生理障害が発生する問題点があった. これまでの研究で袋かけ栽培を行うことでこの障害の発生を完全に抑えられることが明らかとなっている. しかし, 酸味の強い本品種を加工用に栽培する場合, 袋かけ栽培を行っていたのでは採算に見合わず, 実用可能な技術とはならない. そこで, 本研究では袋かけ栽培にかわる簡易な斑点状障害の発生抑制技術を開発する基礎的な情報を収集する目的で, 本障害の発生が酸化ストレスによって誘導されているか否かを圃場レベルで試験を行った. 実験1過酸化水素水散布試験 7/3に完全遮光2重袋を果実に被せ, 7/30・8/15・8/31・9/15・9/30に袋内部の果実に過酸化水素水の散布処理を行った. 対照区には蒸留水を散布し, 処理区には1%または10%の過酸化水素水を散布した(n=15). 果実は11/3の収穫適期に斑点状障害の発生程度を調査した. その結果, 過酸化水素1%に比べ10%において発生程度はいずれの時期も高くなった. また, 1%区は7/30散布において発生程度が高くなったが, 10%区では9/30において低くなり, ほかの散布時期は高かった. このことから, 斑点障害は8月~9月中旬に酸化ストレスを受けることで発生することが示唆された. 実験2過酸化水素濃度, アスコルビン酸含量の調査 実験1の処理時期に合わせて, 別に用意した有袋果, 無袋果それぞれから果肉および果皮を採取し, 各部位の過酸化水素濃度とアスコルビン酸含量を調査した. また, 障害が発生しない対照品種として「紅玉」についても調査を行った(n=5). その結果, 過酸化水素濃度は有袋果, 無袋果および紅玉において, 果皮に比べ果肉が高かった. また, 障害が発生していない有袋果において濃度は高くなった. アスコルビン酸含量は果肉の有袋果, 無袋果および紅玉に差はなかった. しかし, 果皮では収穫時期の有袋果, 無袋果が紅玉より高かった.
|