Research Abstract |
脳虚血は高齢者に多く、運動感覚障害のみならず、血管性認知症の原因にもなる。アドレノメデュリン(AM)は、血管拡張ペプチドとして発見されたが、抗炎症作用、抗アポトーシス作用、血管新生作用など多彩な作用も有することから、臨床応用も期待されている。一方でAMは血中半減期が短く、慢性疾患への応用には制限もある。我々は、AM受容体機能調節因子の1つであるRAMP2が、血管のAMの機能を制御していることを見出し、治療標的として有望と考えた。本研究ではRAMP2ヘテロノックアウトマウス(RAMP2+/-)を用いて、急性および慢性脳虚血モデルを作成し、その病態生理学的意義を検討した。 野生型マウス(WT)、RAMP2+/-に対して、1. 片側中大脳動脈閉塞による脳虚血再灌流術(MCAO)、2. 両側総頚動脈にマイクロコイルを留置して狭窄させる慢性虚血術(BCAS)を施行し、laser Dopplerにより脳内血流を計測した。MCAOでは24hr後に脳を摘出して解析し、BCASでは28日後の8方向放射状迷路試験の後、解析を行った。 RAMP2+/-では、MCAO24hr後の脳血流回復の遅延と脳重量の増加を認めた。RAMP2+/-では、梗塞前後とも脳内RAMP2発現はWTの1/2に低下していた。両者とも虚血側のAM発現が上昇したが、RAMP2+/-でより顕著であった。RAMP2+/-では、TNFα, IL1βなどの炎症性サイトカインの発現亢進を認め、脳梁や線状体周辺での神経細胞の脱落や変性の亢進が認められた。一方BCAS後、RAMP2+/-では、作業記憶、参照記憶の低下と、所要時間の延長を認めた。RAMP2+/-では炎症性サイトカインの発現上昇や神経細胞の脱落、変性の亢進が認められた。 AM-RAMP2系は急性および慢性脳虚血において、脳血流の維持や炎症の制御により神経細胞死を抑制し、脳保護に働いている。AM-RAMP2系は、脳虚血に対する新たな治療標的として期待される。
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