Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
我々は難治性疾患であるANCA関連血管炎の病態機序の解明を念頭に研究を行っている。本疾患は好中球対する自己抗体(ANCA)の出現を伴って,腎不全等をきたす重篤な疾患であるが,病態が不明であるため特異的治療が無い。一方ANCAの対応抗原を有する好中球は,効率よく殺菌を行うために細胞外に抗菌蛋白とDNAを放出して殺菌するNETsという機構があることが最近わかったが、NETs成分は外に暴露されるため、自己抗原となる可能性がある。そこで我々はこのNETsに着目し,ANCAの産生にNETsの制御異常が関与する事を報告した。本研究では,更なるNETsとの関連を解析する方法を計画したので結果を報告する。(1. 血管炎モデルの作製)我々は2012年にラットを用いてPTUという薬剤による誘導性の血管炎動物モデルを報告したが,薬剤による治療実験を行うためマウスでのモデル開発を行い、各種野生型マウスにPTUとPMAを投与することでANCAが産生され,肺の炎症を惹起する動物モデルを作成した。しかし病変が軽症であるため現在は他の自己免疫モデルマウスにPTUとPMAを投与する方法を施行中である。(2. 新規分子標的治療法の開発)上記1で作成したPTU/PMAモデルマウスにNETs阻害薬であるPAD4阻害剤を投与したところANCAの産生を抑制した。臓器病変の改善程度については今後解析予定であるが本疾患の発症を抑える可能性を示唆した。(3. NETs制御機構の解析)我々はマクロファージがNETsの制御に影響するという仮説を立てた。その結果,マクロファージはNETs成分を貪食し,かつDNase用のDNAを溶解する成分を放出し制御していることがわかった。この事はマクロファージによる制御能の低下がNETs処理不足を招きNETsに対する自己抗体の産生に関与することが示唆され,この結果は現在論文投稿中である。