Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
痛風は患者のQOL低下が著しく、効果的な治療法が強く望まれる疾患である。2012年、消化管に高発現するBCRP (ABCG2) の機能低下と高尿酸血症との関連が報告され、新たに腎外排泄低下型と定義された。痛風の発症頻度は加齢により増加することが知られており、加齢性酸化ストレスの主要因であるキサンチンオキシダーゼ (XO) の活性上昇はBCRPのS-S bond形成を抑制し、その機能を低下させる。本研究では、BCRPのS-S bond形成抑制のメカニズムを詳細に明らかにすべく、XO活性化による小胞体 (ER) ストレスを検討した。ERストレスマーカーのひとつであるPERKのリン酸化を検討したところ、ヒポキサンチンの添加によりPERKのリン酸化の亢進が確認された。また、リン酸化PERKの下流に位置するATF4の発現を確認したところ、ヒポキサンチンの添加はATF4の発現を増大させた。続いて、PERKと同様にERストレスのマーカーであるXBP1 mRNAのスプライシングを確認した。その結果、ヒポキサンチン添加によるXBP1のスプライシングは確認されなかった。また、スプライシングXBP1の下流に位置するCHOPタンパク質の発現量を確認したが、発現上昇は確認できなかった。XBP1のスプライシングはCHOP等の発現を増加させ、アポトーシスを誘導する。以前の検討から、本条件でのヒポキサンチン添加により細胞死は誘導されておらず、一致する結果が得られた。以上のことから、ヒポキサンチン添加はPERKのリン酸化を亢進させることが示された。PERKのリン酸化はmisfoldタンパク質の分解などER機能の適正化を行う。このことから、ヒポキサンチン添加によるBCRP S-S bond形成の抑制はERストレスの初期に生じ、ERストレスを誘導するmisfoldedタンパク質のひとつである可能性が示唆された。